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真の愛国心
しんのあいこくしん
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「新渡戸稲造論集」 岩波文庫、岩波書店
2007(平成19)年5月16日
初出「実業之日本 二八巻二号」1925(大正14)年1月15日
入力者田中哲郎
校正者ゆうき
公開 / 更新2010-04-27 / 2014-09-21
長さの目安約 8 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

国を偉大にする一の方法

 長く外国におり、しかも日本人と交わること少く、かえって日々多数の国の人々と交わっていると、各国の国民性をいくらか窺うことが出来るように思う。我輩の勤めている役所に来ている人々は公式にその国の政府から任命されたるものでないから、国家または政府を代表するものではないが、国民そのものはこれを代表せざるを得ない。政府はこれを任命しないとしても、これを推薦するのであるから自分の国民を辱めるような人を出すはずはない。従ってこの役所に集まって来る人々は、国民性の長所を備えているものであるというも過言であるまい。故に日々交わっていて不愉快と思うものは甚だ少く、性質の善く、交り易い人が多く、仕事するにも自ら愉快である。他山の石以て玉を磨くべしという教が世に伝えられているが、僕は各国人と交わり、各国人の長所を学びたい心持する。例えば某国人は頗る勤勉である。ある国人は快闊である、ある国人は機敏である、ある国人は耐忍が強いというが如く、他国人の長所を見るにつけても、自分の短所が一層明になると思う。かくいうたならば、あるいは謙遜に過ぎて卑屈になる恐もありとするものもあるであろうが、仮りに僕自身は個人としてこの過があるとしても、国民全体はなかなか謙遜の態度を執る恐もないから、僕は寧ろ我国民性に如何なる欠点あるかを省るのが国を偉大にする一の方法でないかと思う。言葉を換えて言えば反省、自己の過を知ること、己の短所を自覚すること、これが大に伸びんとする前に大に屈せねばならぬという訓に適うことで、これがなければ国民は慢心するのみである。慢心は亡国の最大原因である。

米国詩人の無遠慮な詩

 我輩の友人にアーヴィンという文士として相当に名を轟かした米人がある。この人が昨年の夏頃作った詩がある。これを読んで我輩は大に感服した。事は日本に関することであるから、必らずや我国語に翻訳せられ、または有識者の間には原詩が大に広まれるものと思い、これを友人間に質したが、更に伝わっていないと聞いて大に残念に思うた。
 詩の題は「隣邦の日本よ、しばし待て」(Wait neighbour Japan)というのである。しかしてその要点は世界の歴史を繙けば、国が亡びんとする前には、国が富みその兵が強くなる。国民が慢心して終には亡ぶるものである。米国は今まさにその轍を踏まんとしている。隣邦の人よ、しばし待て、汝に無礼するものは自ら亡ぶというので、このことを無遠慮に詠じている。我輩はこれを読んで非常に驚いた。彼がその同胞なる米国人を警戒するに親切であることは、彼の従来の著書に現われているが、かくも露骨に、しかも外国人にあてて自国人の欠点を忌憚なく述べた彼の勇気は実に敬服の至りである。またも一歩深く立ち入って彼の心情を窺えば、彼の真意はその同胞を警戒するにありとはいえ、言葉として外に現われたもの…

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