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万葉秀歌
まんようしゅうか
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「万葉秀歌 下巻」 岩波新書、岩波書店
1938(昭和13)年11月20日、1948(昭和23)年1月20日第10刷改版、1954(昭和29)年1月7日第23刷改版、1968(昭和43)年12月25日第41刷改版
「万葉秀歌 上巻」 岩波新書、岩波書店
1938(昭和13)年11月20日第1刷、1953(昭和28)年7月23日第22刷改版、1968(昭和43)年11月25日第44刷改版
入力者門田裕志
校正者松永正敏
公開 / 更新2008-08-04 / 2014-09-21
長さの目安約 433 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

     序

 万葉集は我国の大切な歌集で、誰でも読んで好いものとおもうが、何せよ歌の数が四千五百有余もあり、一々注釈書に当ってそれを読破しようというのは並大抵のことではない。そこで選集を作って歌に親しむということも一つの方法だから本書はその方法を採った。選ぶ態度は大体すぐれた歌を巻毎に拾うこととし、数は先ず全体の一割ぐらいの見込で、長歌は罷めて短歌だけにしたから、万葉の短歌が四千二百足らずあるとして大体一割ぐらい選んだことになろうか。
 本書はそのような標準にしたが、これは国民全般が万葉集の短歌として是非知って居らねばならぬものを出来るだけ選んだためであって、万人向きという意図はおのずから其処に実行せられているわけである。ゆえに専門家的に漸く標準を高めて行き、読者諸氏は本書から自由に三百首選二百首選一百首選乃至五十首選をも作ることが出来る。それだけの余裕を私は本書のなかに保留して置いた。
 そうして選んだ歌に簡単な評釈を加えたが、本書の目的は秀歌の選出にあり、歌が主で注釈が従、評釈は読者諸氏の参考、鑑賞の助手の役目に過ぎないものであって、而して今は専門学者の高級にして精到な注釈書が幾つも出来ているから、私の評釈の不備な点は其等から自由に補充することが出来る。
 右のごとく歌そのものが主眼、評釈はその従属ということにして、一首一首が大切なのだから飽くまで一首一首に執着して、若し大体の意味が呑込めたら、しばらく私の評釈の文から離れ歌自身について反復熟読せられよ。読者諸氏は本書を初から順序立てて読まれても好し、行き当りばったりという工合に頁を繰って出た歌だけを読まれても好し、忙しい諸氏は労働のあいま田畔汽車中電車中食後散策後架上就眠前等々に於て、一、二首或は二、三首乃至十首ぐらいずつ読まれることもまた可能である。要は繰返して読み一首一首を大切に取扱って、早読して以て軽々しく取扱われないことを望むのである。
 本書では一首一首に執着するから、いわゆる万葉の精神、万葉の日本的なもの、万葉の国民性などいうことは論じていない。これに反して一助詞がどう一動詞がどう第三句が奈何結句が奈何というようなことを繰返している。読者諸氏は此等の言に対してしばらく耐忍せられんことをのぞむ。万葉集の傑作といい秀歌と称するものも、地を洗って見れば決して魔法のごとく不可思議なものでなく、素直で当り前な作歌の常道を踏んでいるのに他ならぬという、その最も積極的な例を示すためにいきおいそういう細かしきことになったのである。
 本書で試みた一首一首の短評中には、先師ほか諸学者の結論が融込んでいること無論であるが、つまりは私の一家見ということになるであろう。そうして万人向きな、誰にも分かる「万葉集入門」を意図したのであったのだけれども、いよいよとなれば仮借しない態度を折に触れつつ示した筈である。昭和…

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