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金持ちと鶏
かねもちとにわとり
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「定本小川未明童話全集 1」 講談社
1976(昭和51)年11月10日
初出「こども雑誌」1919(大正8)年10月
入力者特定非営利活動法人はるかぜ
校正者江村秀之
公開 / 更新2013-10-04 / 2014-09-16
長さの目安約 6 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 あるところに金持ちがありまして、毎日退屈なものですから、鶏でも飼って、新鮮な卵を産まして食べようと思いました。
 鳥屋へいって、よく卵を産む鶏を欲しいのだが、あるか、と聞きました。
 鳥屋の主人は、
「よく卵を産む鶏なら、そこのかごの中に入っていますのより、たくさん産む鶏はありません。」といいました。
 金持ちは、かごの中に入っている鶏を見ました。それは、背の低い、ごま色の二羽の雌鶏と、一羽のあまり品のよくない雄鶏でありました。
「これがそんなに卵を産むのか。」と、金持ちは問い返しました。
「産むにも、それほど産む鶏は、おそらくありません。」と、鳥屋の主人は答えました。
 金持ちは、その三羽の鶏を買って家に帰りました。
 なるほど、日数がたつにつれて、雌鳥は毎日卵を産みはじめました。一日とて休みなく産んだのであります。金持ちは、毎日新鮮な卵を食べられるので喜びました。
「買う時分には高いと思ったが、こう、毎日卵を産むんでは、ほんとうに安いものであった。こんないい鶏というものは、めったにあるもんでない。」と、独りで自慢をしていました。
 ある日のことでありました。金持ちの友だちが遊びにきました。金持ちは友だちに向かって、
「家の鶏は、ほんとうに珍しい鶏で、毎日いい卵を産む。まあ、あんな鶏はめったにないものだ。」と、自分の鶏をたいそうほめていいました。
 友だちは、日ごろから、やはり鶏が好きであったものですから、
「ほう、おまえさんも、このごろは鶏を飼いはじめなさったか。どれ、どれ、どんな鶏だかひとつ見せてもらおう。」といって、さっそく、裏に出て、その鳥をながめました。
 金持ちは、そのそばにやってきて、
「どうだい、珍しい鶏だろう。」といいました。
 友だちは、黙って、その鶏を見ていましたが、やがて大きな口を開けて笑い出しました。
「おまえさんは、まだ鶏にはまったくの盲目じゃ、この鶏などは、ざらに世間にある鶏で、珍しい鶏でもなんでもない。」といいました。
 それから、友だちは、自分の養鶏によって経験をした、いろいろなことを語って金持ちに聞かせましたので、金持ちは、自慢したのが恥ずかしくなりました。
 友だちが、帰りました後で、金持ちは、なんだか悔しくてなりませんでした。日ごろから負けずぎらいな男でありましたから、どうかして、そのうち友だちを驚かしてやりたいものだと思いました。
 いままでのように、金持ちは、卵を産む鶏をたいせつにしなくなりました。どうかして、こんなありふれた鶏をどこかへやって、珍しい鶏をほしいものだと思いました。
 ある日のこと、金持ちはふたたび町の鳥屋にやってきました。
「鳥屋さん、どうか私に珍しい鶏を売ってくれないか。この前、この店で買って帰った鶏はありふれた鶏で、珍しくもなんともない。」といいました。
 すると、鳥屋の主人は、
「この前…

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