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強い大将の話
つよいたいしょうのはなし
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「定本小川未明童話全集 1」 講談社
1976(昭和51)年11月10日
入力者特定非営利活動法人はるかぜ
校正者江村秀之
公開 / 更新2013-10-12 / 2014-09-16
長さの目安約 5 ページ(500字/頁で計算)
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本文より



 ある国に、戦争にかけてはたいへんに強い大将がありました。その大将がいる間は、どこの国と戦争をしても、けっして負けることはないといわれたほどであります。
 それほど、この大将は知略・勇武にかけて、並ぶものがないほどでありました。それですから、よくほかの国と戦争をしました。そして、いつも勝ったのであります。
 あるとき、隣の国と戦争をしました。それは、いままでにない大きな戦争でありました。そして両方の国の兵隊が、たくさん死にました。隣の国では、今度ばかりは勝たなければならぬといっしょうけんめいに戦いましたけれど、やはりだめでした。そして、とうとう最後に負けてしまいました。けれど、さすがの強い大将も、今度はやっと勝ったというばかりで、みな家来のものもなくしてしまいました。
 大将は疲れて、生き残ったわずかな人たちとともに、都をさして戦場から歩いてきました。そして、戦争のために荒れはてた、さびしいところを通らなければなりませんでした。森も林も、大砲の火で焼けてしまったところもあります。広い野原に、青草ひとつ見えないところもあります。まったく昔の日と、あたりの景色がすっかり変わっていました。
 ある日の暮れ方、大将は、まったく路に迷ってしまったのであります。



 このとき、あちらから目を泣きはらした、貧しげな女がやってきました。その女は、もうだいぶの年とみえて、頭髪が白うございました。
 大将は、女を呼び止めて、都へゆく路をたずねました。
「あなたは、どなたさまでございますか。」と、年老った女は、泣きはらした目を上げて尋ねました。
「おまえは、俺を知らないのか、今度大戦争をして、ついに敵を負かした、大将が俺だ。」と、大将はいわれました。
 年老った女は、じっとその顔を見上げていましたが、
「あなたは、地図をお持ちにならないのでございますか。」と申しました。
「ああ、この大戦でみんな焼けてしまった。」と、大将は激戦の日の有り様を目に思い浮かべて答えられました。
 すると年老った女は考えていましたが、さびしい細い路を指さして、
「これを、まっすぐにおゆきなさるとゆかれます。」と申しました。
 大将は、わずかな家来を引き連れて、その路を急がれました。けれど、どこまでいっても人家がありません。やっとたどりついたところは、いつか激戦のあった、思い出してもぞっとするような戦場であって、ものすごい月の光が照らしていたのであります。



「こんなところへきては、後ろへもどるようなものだ。あのおばあさんは、うそをいったな。」と、大将は怒られました。その夜は野宿をして、翌日、またその道を引き返したのです。
 今度は、あちらから、白い着物をきて、髪を乱したはだしの娘がきました。大将は、その娘を呼び止められました。
「俺は、大将だが、都の方へゆく路は、どういったがいいか。」…

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