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ものぐさじじいの来世
ものぐさじじいのらいせ
作品ID51021
著者小川 未明
文字遣い新字新仮名
底本 「定本小川未明童話全集 2」 講談社
1976(昭和51)年12月10日
入力者ぷろぼの青空工作員チーム入力班
校正者富田倫生
公開 / 更新2012-07-26 / 2014-09-16
長さの目安約 4 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

 あるところに、ものぐさじいさんが住んでいました。じいさんは、若いときから、手足を動かしたり、人にあって話をしたりすることを、ひじょうにものぐさがって、いつもじっとしていることが好きでありました。
 花が咲いても、どこかへ見物に出かけるでなし、お祭りがあっても、わざわざいってみるという気持ちにもならず、一日、じっとして背中を円くしてすわっていました。
 年をとってからは、ますますものぐさになって、倒れている火ばしを直すのもめんどうがったのであります。けれど、おじいさんは徳人とみえて、みんなから愛されていました。また暮らしにも困らずに、終日、日のよく当たるところに出て、ひなたぼっこをしていました。
 おじいさんは、あまり口数はきかなかったけれど、それは根がいい人でありました。そうかといって、人々が、おじいさん、おじいさんと話しかけてこようものなら、それは、むずかしい顔をしてうるさがりました。
「おじいさん、今日は、いいお天気だから、どこかへお出かけなさい。」と、家のものがいうと、おじいさんは、はげ頭を空に向けて、
「ああ、風が寒いから止しだ。」といいました。
 それから、おじいさんは、それは、また寒がりでありました。けれど、こうした気むずかしやのおじいさんでも、子供は好きでした。
 おじいさんは、ものぐさ者ですから、子供を集めて、けっしておもしろい話などをきかせるようなことはなかったが、見てにこにこと笑っていました。子供は、おじいさん、おじいさんといって、そのまわりで遊びました。そして、おじいさんが、こくり、こくりと居眠りをしますと頭の上に紙きれをのせたり、背中に旗などを立てておもしろがって笑ったものです。
 おじいさんは、子供ばかりには、いやな顔もしませんでした。
 だれでも年をとると、一度は死にますように、おじいさんも、とうとうなくなる日がまいりました。
 おじいさんは、この世にいるときに、悪いことをしなかったから極楽へいきました。
 すると、仏さまは、おじいさんに向かって、
「おまえは、世の中にいるときに、あまりものぐさで、他人に対して、特別によいこともしなかったかわりに、悪いこともしなかった。そして、子供に対してはやさしかったから、なんでもおまえの望みの一つだけはきいてやる。」といわれました。
 おじいさんは、頭をかしげて、なにをお願いしたらいいだろうかと考えていました。
「仏さま、私は、もう人間になって世の中へ出るのはまっぴらでございます。もっと、のんきな安楽なものにしてくださいまし。」と願いました。
 仏さまは、おじいさんのものぐさを笑われました。
 さて、そんなら、なんにしてやろうかと、仏さまはお考えになりましたが、なかなかおじいさんの望みのようなものは、ちょっと見つかりませんでした。
「へびにしようか。」と、仏さまはお思いになりました。けれど、…

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