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てかてか頭の話
てかてかあたまのはなし
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「定本小川未明童話全集 2」 講談社
1976(昭和51)年12月10日
初出「童話」1920(大正9)年10月
入力者ぷろぼの青空工作員チーム入力班
校正者江村秀之
公開 / 更新2013-11-27 / 2014-09-16
長さの目安約 5 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 ある田舎に、おじいさんの理髪店がありました。おじいさんは、もうだいぶ年をとっていまして、脊が曲がっていました。いいおじいさんなものですから、みんなに、おじいさん、おじいさんと慕われていました。
 ちょうど、夏の昼過ぎのことであります。お客が一人もなかったので、おじいさんは、居眠りをしていました。
 家の外には、きらきらとして暑そうに日の光がさしていました。往来の土は乾ききって、石の頭までが白くなっていました。あまりあついとみえて、犬一ぴき通っていませんでした。よく遊びにくる近所の子供らも、みんな昼寝をしているとみえて姿を見せません。ただせみが、あちらの森の方で鳴いているのが聞こえてきたばかりでした。
 白髪頭のおじいさんは、いい気持ちで、こっくり、こっくりと腰かけて居眠りをしながら夢を見ていました。
「おじいさん、僕にとんぼを捕っておくれ。」と、隣のわんぱく坊やがねだっているのです。
「私は、目が悪くて、とんぼのほうが、よほどりこうだから、それだけはだめだ。」と、おじいさんはいっていました。
「よう、あすこにいるおはぐろとんぼを捕っておくれ。捕ってくれないとぶつよ。」と、わんぱく坊やがいっています。
 おじいさんは、「こいつめが。」といって、坊やを追いかけようとすると目がさめました。ちょうどそのとき、そこへ脊の高い若者が入ってきました。
「おいでなさい。」と、おじいさんは、目をこすりながら立ち上がりました。そして、曲がった脊をのして、いすに腰をかけて、鏡に向かっている若者の頭髪を刈ろうといたしました。
 おじいさんは、眼鏡をかけて、はさみをチョキチョキと鳴らしながら、くしをもって、若者の頭髪にくし目を入れてみて驚きました。その頭髪は、ごみや砂で汚れて、もう幾年も手を入れたことのないような頭髪でありました。
「おまえさんは、どこからきなさった。」と、おじいさんは、若者に聞きました。
 すると、若者は、日に焼けた、真っ黒な顔を向けて、おじいさんにいいました。
「俺かい、俺は、山ん中から出てきた。町なんかめったに出たことはねえだ。俺、この間、途中でたいへんにきれいな男の人を見た。その人の頭は、ぴかぴかと岩からわき出る清水のように光っていただ。俺、どうして、あんなに人間の頭ちゅうものが、ぴかぴか光るだかと、いろいろの人に聞いたら、中で、それは、鬢付け油というものを塗るからだと教わった。俺、一生に一度でいいから、あんなぴかぴかした頭になってみたいと思ってきただ。途中で、いちばん上等な鬢付け油を高い金出して買ってきたから、これを俺の頭にみな塗ってもらうべえ。」と、その若者はいいました。
「それで、おまえさんはやってきなすったか。」と、人のいいおじいさんは、笑って聞きました。
「ああ、それできた。ここに一本あるんだが、これじゃたりないかえ。」と、若者は、買ってきた一本の…

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