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木と鳥になった姉妹
きととりになったきょうだい
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「定本小川未明童話全集 2」 講談社
1976(昭和51)年12月10日
初出「こども雑誌」1920(大正9)年7月
入力者ぷろぼの青空工作員チーム入力班
校正者江村秀之
公開 / 更新2013-11-12 / 2014-09-16
長さの目安約 10 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 あるところに、人のよいおばあさんが住んでいました。このおばあさんはいろいろな話を知っていました。怖ろしいような話も、不思議な話も、またおかしいような話なども知っていました。この話は、やはりそのおばあさんが聞かせてくれたのであります。
 昔、昔、あるところに、仲のいい姉と妹とがありました。姉はよく妹をかわいがり、妹はまたよく姉を慕いました。
 姉は、気質のきわめてやさしい人柄でありまして、すぐに涙ぐむというほうでありましたけれど、あまり顔が美しくありませんでした。妹のほうは、やはり、やさしいにはやさしかったけれど、姉にくらべると、快活なほうでありました。そして、目は鈴を張ったように美しく、唇の色はとこなつの花のように紅く、髪は黒く長く肩へ垂れて、まれに見るような美しさでありました。
 二人は、だんだん年をとるにつれて、河辺を歩いているときも、水に映った自分の姿に気をとめてながめるようになりました。
 ある日のこと、二人は、小川にそうて散歩をしていました。川の辺には、白い花や、桃色の花が咲いていました。そのとき、姉は水に映った自分の姿をながめて、顔を赤くしながら、
「なんというおまえは、美しくこの世に生まれておいでだろう。それにひきかえて、私は、なんという醜い姿で、生まれてきたでしょう。私は、だれをもうらみません。これもきっと、この前の世で、おまえはよいことをたくさんなさったので、それで神さまが、そんな美しい姿にしてくだされたのです。私は、覚えのあろうはずがないけれど、なにか罪を犯したので、それで神さまは、この世へこんなに醜く生まれさせられたのです。」と、姉はいいました。
 これを聞くと、妹は、目をみはってびっくりして、
「姉さん、なにをおいいなさるのですか。人間は、顔や、形よりも、魂が大事なのです。魂の美しいほうが、どれほど、貴いかわかりません。姉さんのように、やさしいしんせつな、親孝行な人がたくさんありましょうか。あなたのお心は、あの空の星よりも、きれいで輝かしくあります。いま、姉さんのおっしゃったように、また人間が、今度の世に生まれてくるものなら、姉さんは、この世界じゅうでなにものよりも、美しく、めぐみ深く、またみんなから愛せられ、慕われるものになられるでありましょう。」と、妹はいいました。
 すると、姉は、この言葉を聞いているうちに、いつしか涙ぐんでしまいました。
「いえいえ、もうおたがいに、今度の世のことなどはいいますまい。ただ、私はいつまでもおまえと仲よく、こうして暮らしたいと思うのですけれど、それがかなわないような気がして悲しいのです。あの花よりも美しい、あのこちょうよりもきれいなおまえが、どうしていつまでもこんな寂しいところに住んではいなかろうと思うのです。それを考えると、私の胸はふさがって、いっぱいになります。」と、姉はいいました。
「姉さん…

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