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赤い姫と黒い皇子
あかいひめとくろいおうじ
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「定本小川未明童話全集 3」 講談社
1977(昭和52)年1月10日
初出「童話」1922(大正11)年9月
入力者ぷろぼの青空工作員チーム入力班
校正者本読み小僧
公開 / 更新2012-09-04 / 2014-09-16
長さの目安約 9 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 ある国に美しいお姫さまがありました。いつも赤い着物をきて、黒い髪を長く垂れていましたから、人々は、「赤い姫君」といっていました。
 あるときのこと、隣の国から、お姫さまをお嫁にほしいといってきました。お姫さまは、その皇子をまだごらんにならなかったばかりでなく、その国すら、どんな国であるか、お知りにならなかったのです。
「さあ、どうしたものだろうか。」と、お姫さまは、たいそうお考えになりました。それには、だれか人をやって、よくその皇子の身の上を探ってもらうにしくはないと考えられましたから、お伴の人をその国にやられました。
「よく、おまえはあちらにいって、人々のうわさや、また、どんなごようすの方だか見てきておくれ。」といわれました。
 そのものは、さっそく皇子の国へ出かけていきました。すると、隣の国から、人が今度のご縁談について探りにきたといううわさが、すぐにその国の人々の口に上りましたから、さっそく御殿にも聞こえました。
「どうしても、あの、美しい姫を、自分の嫁にもらわなければならぬ。」と、皇子は望んでいられるやさきでありますから、ようすを探りにきたものを十分にもてなして帰されました。
 やがて、そのものは、立ち帰りました。お待ちになっていたお姫さまは、どんなようすであったかと、すぐにおたずねになりました。
「それは、りこうな、りっぱな皇子であらせられます。御殿は金銀で飾られていますし、都は広く、にぎやかで、きれいでございます。」と、家来は答えました。
 お姫さまは、うれしく思われました。しかし、なかなか注意深いお方でありましたから、ただ一人の家来のいったことだけでは、安心をいたされませんでした。ほかに、もう一人、家来をやって、よくようすを探らせようとお考えになったのです。
「こんどは、ひとつ姿をかえてやろう。それでないと、ほんとうのことはわからないかもしれぬ。」と思われましたので、お姫さまは、家来を乞食に仕立てて、おつかわしになりました。
 いろいろの乞食が、東西、南北、その国の都をいつも往来していますので、その国の人も、これには気づきませんでした。
 乞食に姿をかえたお姫さまの使いのものは、いろいろなうわさを聞くことを得ました。そして、そのものは、急いで帰りました。
 お姫さまは、待っておられたので、そのものが帰るとすぐに自分の前にお召しなされて、聞いたことや見たことを、すっかり話すようにといわれました。
「私は、つい皇子を目のあたりに見られませんでした。しかし、たしかに聞いてまいりました。皇子は御殿から外に出られますときは、いつも黒い馬車に乗っていられます。そして、いつも皇子は、黒のシルクハットをかぶり、燕尾服を着ておいでになります。そして片目なので、黒の眼鏡をかけておいでになるということです。」と申しあげました。
 お姫さまは、これを聞くと、前の家来…

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