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お姫さまと乞食の女
おひめさまとこじきのおんな
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「定本小川未明童話全集 3」 講談社
1977(昭和52)年1月10日
初出「童話」1922(大正11)年4月
入力者ぷろぼの青空工作員チーム入力班
校正者本読み小僧
公開 / 更新2012-12-13 / 2014-09-16
長さの目安約 16 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 お城の奥深くお姫さまは住んでいられました。そのお城はもう古い、石垣などがところどころ崩れていましたけれど、入り口には大きな厳めしい門があって、だれでも許しがなくては、入ることも、また出ることもできませんでした。
 お城は、さびしいところにありました。にぎやかな町へ出るには、かなり隔たっていましたから、木の多い、人里から遠ざかったお城の中はいっそうさびしかったのであります。
 お城の中には、どんなきれいな御殿があって、どんな美しい人々が住んでいるか、だれも知ったものがなかったのです。旅人は、お城の門を通り過ぎるときに、足を止めてお城のあちらを仰ぎました。けれど、そこからは、なにも見ることができませんでした。
「なんでも、きれいな御殿があるということだ。」と、一人の旅人がいいますと、
「美しいお姫さまがいられて、いい音楽の音色が、夜も昼もしているということだ。」と、また他の一人の旅人がいっていました。
 こうして、旅人は、いろいろなうわさをしながら、そのお城の門の前を去ってしまったのであります。
 お城の中には、美しい御殿がありました。そして御殿の一室に、美しいお姫さまが住んでいられて、毎日、歌をうたい、いい音色をたてて音楽を奏せられ、そして、窓ぎわによりかかっては、遠くの空をながめられて、物思いにふけっていられました。そのことはだれも知ることができなかったのです。
 お姫さまは、このお城の中で大きくなられました。そして、このお城の内しかお知りになりませんでした。お城の中には、大きな林がありました。また、大きな濠がありました。林の中には、いろいろな鳥がどこからともなく集まってきて、いい声でないていました。またお濠や、池の中には、珍しい魚がたくさん泳いでいました。そのほか、御殿の中には、この世の中のありとあらゆる珍しいものが飾られてありました。けれどお姫さまは、もはや、そんなものを見ることに飽きてしまわれました。
「ああ、わたしは、このお城の中にばかりいることは飽きてしまった。このお城の中から外へ出てみたいものだ。」と、お姫さまは思われました。
 このことをおつきのものに話されますと、おつきのものは、びっくりして、目を円くしていいました。
「それはとんでもないことです。このお城の内ほどいいところは、どこへいってもありません。お城の外に出ますと、それはきたないところや、暗いところや、また悪い人間などがたくさんにいまして安心することができません。お城のうちほど、いいところがどこにありますものですか。」と申しました。
 しかし、お姫さまは、だれがなんといっても、やはり、お城の外に出て、世の中というものを見たいと思われました。
「世の中というところは、どんなところだろう。そこには、にぎやかな町があるということだ。その町へいったら、きっと自分の知らないおもしろいことがたく…

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