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星と柱を数えたら
ほしとはしらをかぞえたら
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「定本小川未明童話全集 3」 講談社
1977(昭和52)年1月10日
初出「小学男生」1921(大正10)年9月
入力者ぷろぼの青空工作員チーム入力班
校正者江村秀之
公開 / 更新2014-01-19 / 2014-09-16
長さの目安約 4 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 あるところに、広い圃と、林と、花園と、それにたくさんな宝物を持っている人が住んでいました。この人は、もうだいぶの年寄りでありましたから、それらのものを、二人の息子たちに分けてやって、自分は隠居をしたいと思いました。
 けれど、兄のほうも、弟のほうも、そろって怠け者でありました。兄のほうは、一日仕事もせずに、ぶらぶらと家の中で遊んでいました。そして、圃へ出て働いたり、外を歩いたりすることが大きらいでありました。
 弟のほうは、兄とちがって、すこしも家におちついて勉強をするということがなかったのです。一日、外を遊びまわって、日が暮れると家を思い出して帰ってくるというふうでありました。しかし、圃へ出て働くということは、兄と同じように大きらいでありました。
 二人の息子たちが、こんなふうに怠け者でありましたから、父親はほんとうに困ってしまいました。行く末のことなどが案じられて、どうかして、いい子供になってくれぬものかと、そればかり心に念じていました。
 いくら、二人に向かって、「仕事をせよ。」といったり、また、「働けよ。」といっても、ぬかに釘でありました。
 そのうちに、父親は、だんだん年をとって、ますます二人のことを考えると気になってならなかったのです。ある日のこと、ふと、父親は、なにか考えると、二人を自分の前に呼びました。兄と弟は、なにごとだろうと思って、父親の前にすわって、顔をながめました。
「私は、もうだいぶ年を老った。早く財産をおまえがたに分けてやって、隠居をしたいと思う。けれど、そのかわりおまえがたは、私のいいつけたことをしなければならない。」と、父親はいいました。
「お父さん、私たちのできることなら、なんでもいたします。むずかしいことでなければ。」と、兄と弟はいいました。
 父親は、兄に向かって、
「おまえは、外を歩くことがきらいだから、夜になったら、空に出る星の数を数えてみれ。目に見えるのだけ、いくつあるか、当てたなら財産を分けてやる。」
 父親は、弟に向かって、
「おまえは、毎日、出歩くことが好きだから、この村はずれから十里あちらの町に出るまで、電信柱の数が幾本あるか、かぞえてみれ。それを当てたら財産を分けてやる。」
 こう、二人にいいました。兄と弟は、たがいにこんなことはぞうさもないことだと答えました。
 弟は、すぐに出発しました。兄は、日の暮れるのを待って、外の木の下に腰をかけました。そして、よく晴れわたった夜の空を仰ぎました。青い、青い、奥底から、一つ、一つ星の光が輝きはじめて、いつのまにか大空は、まいたように星がいっぱいになったのです。
 兄は、一つ、二つと数えました。しまいには、指が疲れ、目が疲れましたけれど、我慢をして、「財産がもらえるのだ。」と思って、かぞえました。すると、そのうちに雲が出てきて星の光を隠してしまいました。兄は、がっ…

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