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文明と病気
ぶんめいとびょうき
作品ID51195
原題CIVILIZATION AND DISEASE
著者シゲリスト ヘンリー・E
翻訳者水上 茂樹
文字遣い新字新仮名
入力者
校正者The Creative CAT
公開 / 更新2010-02-21 / 2019-03-25
長さの目安約 420 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

序説


「メッセンジャー博士記念講義」は「文明の進化」を取り扱うものであり病気がこの文明の進化において重要な役割を果たしていることは疑いもない。物質的な過程である病気と人類の心の崇高な産物である文明の両者以上に異なる2現象は他にない。しかしこれらの間の関係はきわめて明らかである。
 病気が生物学的な過程であることは今日ではよく知られている。人間は正常の刺激にたいして正常の生理的な反応でもって応答する。人間は条件の変化にたいして高度の適応性を持っている。我々は休息しているときでも激しい運動をしている時でも海面レベルでも高山でも暑い熱帯でも寒い極地でも健康に暮らすことができる。人体はある程度まで呼吸、循環、代謝などを変化する条件に適応させることができる。刺激が生体の適応能力を量的または質的に超えると生体の反応はもはや正常ではなく異常すなわち病的である。これらの反応は病気の症状であり傷ついた臓器の働きであり障害に打ち克とうとする防衛機構である。病気とは異常刺激にたいする生体またはその部分の異常反応の総和である。
 しかし病気は個人にとって生物学的な過程であるだけではなく体験であり全生涯に非常に深刻な影響を及ぼすこともあり得る。人間は文明の創造者なので病気はその人の生涯および行動に影響することによって彼が創造するものにたいしても影響する。
 しかし病気は個人だけではなくグループ全体を攻撃することがある。一時的な流行病のこともあるし病気がそのグループまたは地域に根を下ろすことによって風土病となる。多くの例に見られるようにこのようなグループの文化生活はこの病気の影響を反映することになる。
 古代および原始時代の人間および動物の遺物を研究すると病気は文明の歴史の間だけでなく人類が現れるずっと以前にも広がっていたことが示されている。病気は生命そのものと同じように古いと考えて間違いが無いであろう。すべての生体の適応性よりも強い刺激が常に存在していたからである。化石の骨を調べてみると病気は基本的に言って今日に見られるのと同じような形でずっと起きてきたことが示される。言い換えると動物体は異常な刺激に効果的に反応する炎症や成長などなどのような機構を限られた数しか持っていない。
 病気は常に起きてきたので人間のすべての慣習や組織は病気によって影響され種々の様式で病気を考慮しなければならなかった。法律は人と人や人と物の関係を調節することを目的とするので病人を考慮せざるを得なかった。病気や苦しみによって起きる問題を取り扱わないで宗教や哲学は世界を説明することはできなかったし文学や美術は世界を再現することはできなかった。病気に打ち克つことは科学によって自然を征服する試みの常に重要な部分であった。
 しかし、この問題にはまったく異なる面が存在する。病気の発生には常に2つの要因が存在する。人…

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