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夏と私
なつとわたし
著者
文字遣い新字旧仮名
底本 「中原中也詩集」 角川文庫、角川書店
1968(昭和43)年12月10日改版
入力者ゆうき
校正者木浦
公開 / 更新2013-04-10 / 2014-09-16
長さの目安約 1 ページ(500字/頁で計算)
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本文より


真ツ白い嘆かひのうちに、
海を見たり。鴎を見たり。

高きより、風のただ中に、
思ひ出の破片の翻転するをみたり。

夏としなれば、高山に、
真ツ白い嘆きを見たり。

燃ゆる山路を、登りゆきて
頂上の風に吹かれたり。

風に吹かれつ、わが来し方に
茫然としぬ、……涙しぬ。

はてしなき、そが心
母にも、……もとより友にも明さざりき。

しかすがにのぞみのみにて、
拱きて、そがのぞみに圧倒さるる。

わが身を見たり、夏としなれば、
そのやうなわが身を見たり。
(一九三〇・六・一四)



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