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星とピエロ
ほしとピエロ
作品ID51331
著者中原 中也
文字遣い新字旧仮名
底本 「中原中也詩集」 角川文庫、角川書店
1968(昭和43)年12月10日改版
入力者ゆうき
校正者木浦
公開 / 更新2013-04-16 / 2018-12-27
長さの目安約 2 ページ(500字/頁で計算)

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本文より


何、あれはな、空に吊した銀紙ぢやよ
かう、ボール紙を剪つて、それに銀紙を張る、
それを綱か何かで、空に吊し上げる、
するとそれが夜になつて、空の奥であのやうに
光るのぢや、分つたか、さもなけれあ空にあんなものはないのぢや

それあ学者共は、地球のほかにも地球があるなぞといふが
そんなことはみんなウソぢや、銀河系なぞといふのもあれは
女共の帯に銀紙を擦りつけたものに過ぎないのぢや
ぞろぞろと、だらしもない、遠くの方ぢやからええやうなものの
ぢやによつて、俺なんざあ、遠くの方はてんきりみんぢやて

見ればこそ腹も立つ、腹が立てば怒りたうなるわい
それを怒らいでジツと我慢してをれば、神秘だのとも云ひたくなる
もともと神秘だのと云ふ連中は、例の八ツ当りも出来ぬ弱虫ぢやで
誰怒るすぢもないとて、あんまり始末がよすぎる程の輩どもが
あんなこと発明をしよつたのぢやわい、分つたらう

分らなければまだ教へてくれる、空の星が銀紙ぢやないというても
銀でないものが銀のやうに光りはせぬ、青光りがするつてか
それや青光りもするぢやらう、銀紙ぢやから喃
向きによつては青光りすることもあるぢや、いや遠いつてか
遠いには正に遠いいが、それや吊し上げる時綱を途方もなう長うしたからのことぢや
(一九三四・一二・一六)



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