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お姉ちゃんといわれて
おねえちゃんといわれて
作品ID51513
著者小川 未明
文字遣い新字新仮名
底本 「定本小川未明童話全集 14」 講談社
1977(昭和52)年12月10日
初出「博愛 737号」1951(昭和26)年1月
入力者特定非営利活動法人はるかぜ
校正者酒井裕二
公開 / 更新2018-06-09 / 2018-05-27
長さの目安約 5 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

 光子さんが、学校へいこうとすると、近所のおばあさんが、赤ちゃんをおぶって、日の当たる道の上に立っていました。
「お姉ちゃん、いまいらっしゃるの。」と、おばあさんは、声をかけました。
 光子さんは、にっこりとしたが、そのまま下を向いて、だまっていってしまいました。
「わたし、お姉ちゃんでないわ。」と、光子さんは、つぶやきました。
 あんなにたのんでも、赤ちゃんを、だっこさしてくれないのに、なんでお姉ちゃんと、いうのだろう。私は、お姉ちゃんといわれても、ちっともうれしいことはないわと、光子さんは、道を歩きながら、思いました。
 そして、おばあさんが、いじわるのような気がして、ていねいにあいさつする気にもなれなかったけれども、赤ちゃんは、かわいらしくて、ほんとうに、あのほおずきのような、ほおをぷっと吹いてやりたくなったのでした。
「どうして、私に、赤ちゃんをだっこさしてくれないのでしょう。」
 ある日、おばあさんは、光子さんのお母さんに向かって、
「このごろ、お光ちゃんは、なにかお気にさわったことがあるとみえて、怒っていらっしゃるのですよ。いくら考えても、なにがお気にさわったかわかりませんが、どうかお母さんから、きいてみてくださいませんか。」と、たのみました。
 こういわれたので、お母さんは、びっくりして、
「まあ、そんなことがあったのですか、それは、なにかおばあさんの、お考えちがいで、ありませんか。しかし、あんなおてんばですから、もし失礼をしましたら、どうぞごめんくださいまし。」と、おわびなさいました。
「いえ、そんなつもりで、いったのでないのですよ。私に気がつきませんから、なにを怒っていらっしゃるのか、お光ちゃんに、おききしてもらいたいのです。こないだも、お姉ちゃんと声をかけますと、下を向いて、にげていって、おしまいなさるのです。きっとなにか怒っていらっしゃるに、ちがいありません。」と、子供の心がわからぬまま、おばあさんは、母親にきいてもらうよう、笑いながらたのんだのでした。
「まあ、そんなまねを、光子がしたのでございますか。」と、お母さんは、顔を赤くして、おばあさんに、きまりのわるい思いをなさいました。
「いいえ、けっして、お光ちゃんをしからんでください。自分に、わけが思い出せないから、おききしたのです。」と、おばあさんも、とがめるつもりで、いったのでないと、恐縮しました。
 お母さんと、おばあさんの、二人は、たがいに心がわかると、へだてなく、笑いながら、世間の話などして、別れたのでした。
 お母さんは、家へ帰って、さっそく、光子さんを自分のそばへ呼びました。そして、おばあさんに対して、どうして、そんな失礼な態度をしたのかと、おききになりました。
 光子さんは、しばらく下を向いて、だまっていましたが、
「早く、おいいなさい。」と、お母さんに、うながされると…

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