えあ草紙・青空図書館 - 作品カード

作品カード検索("探偵小説"、"魯山人 雑煮"…)

楽天Kobo表紙検索

秋が きました
あきが きました
作品ID51528
著者小川 未明
文字遣い新字新仮名
底本 「定本小川未明童話全集 16」 講談社
1978(昭和53)年2月10日
初出「コドモノクニ」1938(昭和13)年10月
入力者特定非営利活動法人はるかぜ
校正者Juki
公開 / 更新2012-09-16 / 2014-09-16
長さの目安約 2 ページ(500字/頁で計算)

広告

えあ草紙で読む
▲ PC/スマホ/タブレット対応の無料縦書きリーダーです ▲

find 朗読を検索

本の感想を書き込もう web本棚サービスブクログ作品レビュー

find Kindle 楽天Kobo Playブックス

青空文庫の図書カードを開く

find えあ草紙・青空図書館に戻る

広告

本文より


 にわの コスモスが、きれいに さきました。しずかな 秋の いい ひよりです。
 ピイー、ピイーと いう、ほそい ふえの 音が しました。
「ラオの すげかえやが きたから、この きせるを たのんで おくれ。」
と、おばあさんが おっしゃいました。
「はい。」
と いって、きよは うけとって そとへ でました。
 しばらく して、きよは かえって きました。
「いくら さがしましても、ラオやさんが みつかりません。」
と いいました。
 この とき、また ピイー ピイーと いう 音が しました。
「あんなに きこえて いるでしょう。」
と、おばあさんは おっしゃいました。
「ぼくが さがして あげるよ。」
と、武ちゃんは かけだしました。
 武ちゃんは、おうらいを あちらこちらと みまわしました。けれど、やはり わかりません。
「ラオやさんは どこに いるのだろう、ほんとうに おかしいな。」
と、武ちゃんは ぼんやり たって いました。
 空は 青く はれて いました。あの はこの ついた 車を ひいて、おじいさんは どこを あるいて いるのかと おもいました。
「武ちゃん、やきゅうを しない?」
と、ふいに 年ちゃんが かたを たたきました。
「いま、これを うちへ おいて くるからね。」
と、武ちゃんは こたえました。
「おばあさん、やはり いませんよ。」
と いうと、おばあさんは、
「ああ そうかい、秋だから 遠方の 音が、ちかく きこえるのかも しれないね。」
と おっしゃいました。
 武ちゃんは いそいで はらっぱへ いくと、もう みんなが あつまって いました。正ちゃんと 良ちゃんは、あたらしい ユニホームを きて いました。
「さあ、はじめようか。」
と、ピッチャーの 正ちゃんが プレートに たちました。そうして、たまを にぎった 手を たかく あげると、みんなが いっしょに ブウー、と サイレンの まねを しました。その こえは、ほんとうの サイレンのように とおくまで ひびきました。
 これを ききつけて、あちらから、きみ子さんと かね子さんが とんで きました。



えあ草紙で読む
find えあ草紙・青空図書館に戻る

© 2024 Sato Kazuhiko