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こがらしの ふく ばん
こがらしの ふく ばん
作品ID51562
著者小川 未明
文字遣い新字新仮名
底本 「定本小川未明童話全集 16」 講談社
1978(昭和53)年2月10日
入力者特定非営利活動法人はるかぜ
校正者Juki
公開 / 更新2012-09-19 / 2014-09-16
長さの目安約 2 ページ(500字/頁で計算)

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本文より


 夜が ながく なりました。おかあさんは おしごとを なさって います。その そばで、きょうだいは 火ばちに あたりながら、くりを たべて いました。
「リンリン リンって、なんの 音だろう。」
 ふいに、正ちゃんは あたまを あげました。
「ねずみが おかってへ でて、なべに さわったのでしょう。」
と、おかあさんは おっしゃいました。
「武ちゃんが 三りん車に のって いるのよ。」
と、つね子さんが いいました。
「いまじぶん、だれが あそんで いるものか。」
 しばらく すると、また、「リンリン リン。」と、いう 音が、かすかに きこえました。
「ほら。」
「ほんとうだわ。」
 おかあさんと 三人が とを あけて、そとを ながめました。こがらしが ふいて、すみわたった いい 月夜でした。
 かどの たばこやの まえに ちょうちんの 火が みえて、人力車が みちを きいて いる ようすです。そのうち こちらへ かけだして くると、リンリン リンと、しんぼうに はめた かねの わが なりました。
 かさを かぶった おじいさんの 車夫です。そして 車の 上には、それは きれいな およめさんが のって いました。
 さむく なって、三人は とを しめました。
「あれは おばけで ない?」
と、正ちゃんが いいました。
「きっと きつねよ。」
と、つね子さんが いいました。
「いいえ、あの おじいさんは、いつ も ていしゃばの まえに いる おじいさんです。」
と、おかあさんが おっしゃいました。
 きょうだいは とこの 中へ はいりました。その とき、また うちの まえを リンリン リンと、とおる 音が しました。いま 車やさんが、かえるのです。
 あとは、こがらしの こえが きこえました。



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