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鳥鳴く朝のちい子ちゃん
とりなくあさのちいこちゃん
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「定本小川未明童話全集 12」 講談社
1977(昭和52)年10月10日
入力者特定非営利活動法人はるかぜ
校正者酒井裕二
公開 / 更新2017-06-28 / 2017-04-03
長さの目安約 8 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

 ちい子ちゃんは、床の中で目をさましました。うぐいすの鳴き声が、きこえてきました。
「おや、ラジオかしら。」
 このごろ、いつもお休み日の朝には、小鳥の鳴き声が放送されたからです。しかし、その声は、お隣の庭の方からきこえてくるような気がしました。あちらには、梅林があるし、木立もたくさんしげっていますから、どこからかうぐいすが飛んできて鳴いているのでないかとも、思われました。
「お母さん、あれラジオのうぐいすなの。」と、ちい子ちゃんは、聞きました。
 とっくに起きて、家の中で働いていらした、お母さんは、
「ほんとうのうぐいすですよ。花が咲いているから、飛んできたのです。さあ、あんたも早く起きて、お顔を洗いなさい。いいお天気ですよ。」と、おっしゃいました。
「ああ、そうだ。日曜学校へいって、先生からお話を聞いて、それから、とみ子さんや、まさ子さんといっしょに遊ぶ、お約束がしてあったのだ。」と、思い出すと、ちい子ちゃんは、すぐに床から出ました。
 空は、緑色にすみわたっていました。朝日がさして、木々の葉はいきいきとかがやいて、いい気持ちであります。
 ちい子ちゃんは、ご飯をいただいてから、お机の前でまごまごしていました。お母さんに髪を結ってもらって、時計を見ると、じき八時になります。
「あら、おくれたらたいへん。」といって、お玄関で、げた箱からくつを出してはいて、お家を出ました。
 さっきのうぐいすでしょう、こんどは、どこか遠くの方で鳴いている声が、きこえてきました。垣根のそばを歩いていくと、赤いつばきの花の咲いた家があります。ご門のところに、ぼけの花のいっぱいに咲いている家もありました。またお庭に白い花の咲いた、高いこぶしの木のある家もありました。そして、ちい子ちゃんが、広い通りへ出ようとしたとき、一軒のご門の前に、一人のおばさんが、ふろしき包みをかかえて、紙片を持って、門札をながめながら、ぼんやり立っているのを見ました。ちい子ちゃんが近づくと、
「お嬢ちゃん、川上さんという家をごぞんじありませんか。」と、おばさんは、聞きました。
「川上さん? 私、知らないわ。」
「番地を書いてもらってきたのですけれど、この番地が見つからないのですよ。」
 おばさんは、家政婦さんか、女中さんでありました。雇われるお家がわからなくて、困っているのです。ちい子ちゃんは、白い新しいたびをはいているおばさんが、なんとなく気の毒になりました。
「おばさん、待っていらっしゃい。」
 ちい子ちゃんは、あちらの角にあった、たばこ屋へ飛んでいきました。そして、川上という家をたずねたのです。
「ああ、川上さんですか。このごろ、越してきた方でしょう。こちらの路地を入って、つき当たりの家です。」と、たばこ屋で教えてくれました。
 ちい子ちゃんは、あちらに立っていた、おばさんのところへ飛んでいって、知ら…

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