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雪消え近く
ゆきぎえちかく
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「定本小川未明童話全集 12」 講談社
1977(昭和52)年10月10日
初出「小学四年生」1939(昭和14)年3月号
入力者特定非営利活動法人はるかぜ
校正者酒井裕二
公開 / 更新2017-03-29 / 2017-01-12
長さの目安約 4 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

 早く雪が消えて、かわいた土の上で遊びたくなりました。雪の下にかくれている土の色がなつかしいのであります。吉郎は、自分の家の前だけでも早く雪をなくそうと思いました。それで朝から外に出て木鋤で、雪をわってはそれを力いっぱい遠く畠の方へとなげていました。
 日がほかほかと当たってきました。しじゅうからが、林へ来て鳴いています。空は、うす青く晴れて、なんとなく気持ちの伸び伸びとするいいお天気でした。
「吉郎さん、雪をわっているの。」と、隣のとめ子さんが赤いえり巻きの中へ半分顔を埋ずめながら、そばへきていいました。
「はやく、雪がなくなるといいね。そうすれば、いろんなことをして遊べるだろう。」と、吉郎は、手を休めて、答えました。額ぎわには、働いたので、あせがにじんでいました。
「おまりをついたり、鬼ごっこをしたりして遊べるわね。」
「だから、早く、僕、雪を消そうと思っているのさ。」
「私も、おてつだいをしましょうか。」
「とめ子さんは、自分の家の前の雪を消せばいいだろう。」
「じゃ、そうするわ。」
 とめ子さんは、お家へ帰っていきました。するとまもなく、とめ子さんは、兄の年雄さんと二人で、支度をしてきました。年雄さんは堅い雪をわるのに、鉄のシャベルを持ち、とめ子さんは、小さな木鋤を持っていました。
「やはり、吉郎さんのお家のほうからやっていきましょうよ。吉郎さんのお家のほうがすんだら、私の家のほうをして、飛んで遊べるようにしましょうよ。」と、とめ子さんが、いいました。
「吉郎くん、それがいいだろう。」と、年雄さんが、いいました。
「ああ、そうしよう。三人でやれば、今日じゅうに、ここだけはできるからね。」
 三人は、雪をわって、それをなげるのに夢中でありました。はやく春がきて、土の上で遊べる楽しみを考えるからです。
 昼過ぎになると、空がすこし曇りました。そして、風が寒くなって、さらさらと雪が落ちてきました。
「あっ、また降ってきたよ。」と、年雄が空を見上げました。
「せっかく、雪をなくしたのに、つまらないわ。」
「年ちゃん、じきに晴れるよ。あっちの方が明るいだろう。」
 吉郎は、南から、西へかけて、雲切れのしている空を指しました。
「だって、北の方は、黒いじゃないか。」
 そこへ近所のおじさんが、ふところ手をして通りかかりました。
「おじさん、また降るだろうか。」と、吉郎がききました。
「もう降ってもたいしたことはない。南が明るいから南風が出そうだ。そうすれば、どんどん消えてしまうからな。」と、おじさんは、いいました。三人は、顔を見合って、にっこり笑いました。おじさんの去った後です。
「さあ、みんなよく働いてくれましたね。おいしいおしるこができたから、入ってお食べなさい。」と、吉郎くんのお母さんが、戸口へ出てきて三人をお呼びになりました。
「うれしいな、早くいって食…

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