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手紙
てがみ
作品ID51792
副題057 慶応三年三月六日 印藤肇あて
057 けいおうさんねんさんがつむいか いんどうはじめあて
著者坂本 竜馬
文字遣い新字旧仮名
底本 「龍馬の手紙、宮地佐一郎」 講談社学術文庫、講談社
2003(平成15)年12月10日
入力者Yanajin33
校正者Hanren
公開 / 更新2010-09-04 / 2014-09-21
長さの目安約 5 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

追白、先日より病気ニて引籠居候まゝ書付として呈しぬ。
下の件ハ長[#挿絵]の御ものがたり申上候得バ、通常の手紙ニしてハ何分別りがたく候間、不文ニハ一ツ書の方がよろしかるべしとて申上たれバ、元より不敬の義御見ゆるしたまえ。
第一段
一、先日中三丈夫関の方へ御帰りの時分なりと思ふが、内同薩の者より極竊ニ承りたるにハ隊の者大夫の身上を大ニ論じ勢だしておりたるよし。猶竊ニ其故を聞ニ大夫は尤海軍ニ志を起され陸軍ニ御セ話無レ之との故のよし。其余の事ハ不分明、小弟思ふニ、三吉大夫が陸軍をおさめたまいし時ハ隊中一同皆報国の赤心を振起し、大夫の賢なるをかんじ居候よし也。
されバ今如レ此の事を聞くハ、定めて小人共私の頭上に其賢大夫のおらぬをうれたみ、ゆハゆる南面してせいすれバ北方うらむの儀ならんか。
第二段
今日不レ計も三吉老翁の来杖、幸ニ諸君の無異平安なるを伝聞相賀し申候。三大夫及大兄ニも三四日中ニニハ、御出関と承リ御待申候。
第三段
上一段二段の事どもつら/\案ずる所、彼竹島行の事ハ兼而御聞ニ入置候通り、三大夫ニも御聞ニ入レ申セしニ、随分御同心ニ候て、何レ近日二度ビ関ニ出候而決定可レ致との事なりし。其後ハまだニ御めニかゝらず、御返じを相待所ナリ。
然ニ当今世上の人情目前の事斗でなけれバ、相談ハならぬ事故ニ諸人ハ竹島行の事共ハ、皆無用の事として大夫が遠大の策にハ随ふまじくか、然レバ其事ハ行ハれまじく残念の儀に相察し候。
第四段
小弟ハヱゾに渡らんとせし頃より、新国を開き候ハ積年の思ひ一世の思ひ出ニ候間、何卒一人でなりともやり付申べくと存居申候。其中助太夫事、別ニ小弟の志を憐ミ、且積年の思ひも在レ之、不レ屈して竊ニ志を振ひ居申候。
然レバ先頃長崎ニて、大洲蒸気船ハ三月十五日より四月朔迄の間ニ借入の定約ハ相定め置たり。故、近日其期限も来るべし。
第五段
先日御耳ニ入レし時内[#挿絵]仰せられしニ、三慎ニあらざれバ自ラ出行致したしと、小弟誠ニ幸也。
然るニ上段の時勢なれバ、君等此地を足を抜事ハどふもむつかしかるべし。
第六段
此月の初より長崎ニ出、大洲の船の来るをまち申べしと思ふ内ニ、小弟先日中風けニて床ニおり候ものから、心ニまかせず彼是する内ニ、大洲の船と共に長崎ニ廻るよふニならんかと思ひおり候。
第七段
大洲の船、石炭費用一昼夜ニ一万五千斤(故ニ二万斤の見込ナリ。)タネ油一昼夜ニ壱斗、
彼竹島ハ地図を以て側算すレバ、九十里斗なるべし。
先頃井上聞太、彼島ニ渡りし者ニ問しニ、百里ナリ、とおふかた同じ事ナリ。
其島ニ渡る者の咄しニ楠木ニよく似てありしもの、広くハ新木在レ之、其外、壱里余より弐里もあらん平地ありしと也。島の流レハ十里斗なりと、小弟曽而長崎ニニて聞しニ何とも相似たる咄し也。是本一ツ所より出たる咄しならんかともうたがふ。
下の関ヨリ行テ下の関ニ帰ル
彼島ニ行て唯かへれバ三…

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