えあ草紙・青空図書館 - 作品カード


広告

かもめ
かもめ
副題――喜劇 四幕――
――きげき よんまく――
原題ЧАЙКА
著者
翻訳者神西 清
文字遣い新字新仮名
底本 「かもめ・ワーニャ伯父さん」 新潮文庫、新潮社
1967(昭和42)年9月25日
入力者米田
校正者阿部哲也
公開 / 更新2010-12-24 / 2014-09-21
長さの目安約 109 ページ(500字/頁で計算)
えあ草紙で読む
HTMLページで読む

広告

find Kindle 楽天Kobo Playブックス

find Audible YouTube

本の感想を書き込もう web本棚サービスブクログ作品レビュー

青空文庫の図書カードを開く

find えあ草紙・青空図書館に戻る

楽天Koboで表紙を検索

広告

本文より

人物
アルカージナ(イリーナ・ニコラーエヴナ) とつぎ先の姓はトレープレヴァ、女優
トレープレフ(コンスタンチン・ガヴリーロヴィチ) その息子、青年
ソーリン(ピョートル・ニコラーエヴィチ) アルカージナの兄
ニーナ(ミハイロヴナ・ザレーチナヤ) 若い処女、裕福な地主の娘
シャムラーエフ(イリヤー・アファナーシエヴィチ) 退職中尉、ソーリン家の支配人
ポリーナ(アンドレーエヴナ) その妻
マーシャ その娘
トリゴーリン(ボリース・アレクセーエヴィチ) 文士
ドールン(エヴゲーニイ・セルゲーエヴィチ) 医師
メドヴェージェンコ(セミョーン・セミョーノヴィチ) 教員
ヤーコフ 下男
料理人
小間使

ソーリン家の田舎屋敷でのこと。――三幕と四幕のあいだに二年間が経過
[#改ページ]

第一幕

ソーリン家の領地内の廃園の一部。広い並木道が、観客席から庭の奥のほうへ走って、湖に通じているのだが、家庭劇のため急設された仮舞台にふさがれて、湖はまったく見えない。仮舞台の左右に灌木の茂み。椅子が数脚、小テーブルが一つ。

日がいま沈んだばかり。幕のおりている仮舞台の上には、ヤーコフほか下男たちがいて、咳ばらいや槌音が聞える。散歩がえりのマーシャとメドヴェージェンコ、左手から登場。

メドヴェージェンコ あなたは、いつ見ても黒い服ですね。どういうわけです?
マーシャ わが人生の喪服なの。あたし、不仕合せな女ですもの。
メドヴェージェンコ なぜです? (考えこんで)わからんですなあ。……あなたは健康だし、お父さんにしたって金持じゃないまでも、暮しに不自由はないし。僕なんか、あなたに比べたら、ずっと生活は辛いですよ。月に二十三ルーブリしか貰ってないのに、そのなかから、退職積立金を天引きされるんですからね。それだって僕は、喪服なんか着ませんぜ。(ふたり腰をおろす)
マーシャ お金のことじゃないの。貧乏人だって、仕合せにはなれるわ。
メドヴェージェンコ そりゃ、理論ではね。だが実際となると、そうは行かない。僕に、おふくろ、妹がふたり、それに小さい弟――それで月給がただの二十三ルーブリ。まさか食わず飲まずでもいられない。お茶も砂糖もいりますね。タバコもいる。そこでキリキリ舞いになる。
マーシャ (仮舞台のほうを振向いて)もうじき幕があくのね。
メドヴェージェンコ そう。出演はニーナ嬢で、脚本はトレープレフ君の書きおろし。ふたりは恋仲なんだから、今日はふたりの魂が融合して、同じ一つの芸術的イメージを、ひたすら表現しようという寸法でさ。ところが僕とあなたの魂には、共通の接点がない。僕はあなたを想っています。恋しさに家にじっとしていられず、毎日一里半の道を、てくてくやって来ては、また一里半帰っていく。その反対給付といえば、あなたのそっけない顔つきだけです。それも無理はない。僕には財産もな…

えあ草紙で読む

ライフメディアへ登録

Koboユーザー必見!
楽天スーパーポイントとは別に
価格の5%がポイントに!

find えあ草紙・青空図書館に戻る

© 2016 Sato Kazuhiko