えあ草紙・青空図書館 - 作品カード


広告

ワーニャ伯父さん
ワーニャおじさん
副題――田園生活の情景 四幕――
――でんえんせいかつのじょうけい よんまく――
原題ДЯДЯ ВАНЯ
著者
翻訳者神西 清
文字遣い新字新仮名
底本 「かもめ・ワーニャ伯父さん」 新潮文庫、新潮社
1967(昭和42)年9月25日
入力者米田
校正者阿部哲也
公開 / 更新2010-12-11 / 2014-09-21
長さの目安約 108 ページ(500字/頁で計算)
えあ草紙で読む
HTMLページで読む

広告

find Kindle 楽天Kobo Playブックス

find Audible YouTube

本の感想を書き込もう web本棚サービスブクログ作品レビュー

青空文庫の図書カードを開く

find えあ草紙・青空図書館に戻る

楽天Koboで表紙を検索

広告

本文より

人物
セレブリャコーフ(アレクサンドル・ヴラジーミロヴィチ) 退職の大学教授
エレーナ(アンドレーヴナ) その妻、二十七歳
ソーニャ(ソフィヤ・アレクサンドロヴナ) 先妻の娘
ヴォイニーツカヤ夫人(マリヤ・ワシーリエヴナ) 三等官の未亡人、先妻の母
ワーニャ伯父さん(イワン・ペトローヴィチ・ヴォイニーツキイ) その息子
アーストロフ(ミハイル・リヴォーヴィチ) 医師
テレーギン(イリヤ・イリイーチ) 落ちぶれた地主
マリーナ 年寄りの乳母
下男

セレブリャコーフの田舎屋敷での出来事
[#改ページ]

第一幕

庭。ベランダのついた家の一部が見える。並木道のポプラの老樹の下に、テーブルがあって、お茶の支度ができている。ベンチ、椅子、それぞれ数脚。ベンチの一つに、ギターが載っている。テーブルのじきそばに、ブランコがさがっている。午後二時すぎ。
曇り日。

マリーナ(ぶよぶよした、動きの少ない老婆)が、サモワールの前に坐って靴下を編んでいる。アーストロフが、そばを歩き回っている。

マリーナ (コップに茶をつぐ)お一ついかが、旦那。
アーストロフ (気乗りのしない様子で、コップを受ける)あんまり欲しくもないがね。
マリーナ ウオトカならあがるんでしょう。
アーストロフ いいや、ウオトカも毎日はやらない。それに、今日は蒸し蒸しするしな。(間)ねえ、ばあやさん。あんたと知り合いになってから、どれくらいになるかなあ。
マリーナ (考えながら)どれくらい? そうですね。……あんたが、この土地においでたのは……あれは、いつだったか……まだソーニャちゃんのお母御の、ヴェーラ様がご存命の頃でしたわねえ。あの方がおいでの時分、あんたは、ふた冬ここへ、かよって見えましたよ。……すると、かれこれもう、十一年になるわけですねえ、(思案して)それとも、もっとになるかしら。
アーストロフ その時分から見ると、わたしも随分かわったろうねえ。
マリーナ ええ、随分。あのころは、お若かったし、おきれいでもあんなすったけれど、今じゃもう、だいぶおふけになりましたよ。男前も、昔のようじゃないしねえ。なにしろ――ウオトカをあがるからねえ。
アーストロフ そう。……この十年のまに、すっかり人間が変ってしまったよ。それもそのはずさ。働きすぎたからなあ、ばあやさん。朝から晩まで、のべつ立ちどおしで、休むまもありゃしない。晩は晩で、毛布のしたにちぢこまって、今にも患者から呼び出しが来やしまいかと、びくびくしている始末だ。この十年のあいだ、わたしは一日だって、のんびりした日はなかった。これじゃ、ふけずにいろというほうが、よっぽど無理だよ。おまけにさ、毎日々々の暮しが、退屈で、ばかばかしくて、鼻もちがならないときている。……ずるずると、泥沼へ引きずりこまれるみたいなものさ。ぐるりにいる連中ときたら、どいつもこい…

えあ草紙で読む

ライフメディアへ登録

Koboユーザー必見!
楽天スーパーポイントとは別に
価格の5%がポイントに!

find えあ草紙・青空図書館に戻る

© 2016 Sato Kazuhiko