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後世への最大遺物
こうせいへのさいだいいぶつ
作品ID519
著者内村 鑑三
文字遣い新字新仮名
底本 「後世への最大遺物 デンマルク国の話」 岩波文庫、岩波書店
1946(昭和21)年10月10日、1976(昭和51)年3月16日第30刷改版
初出「湖畔論集 第六回夏期学校編」十字屋書店、1894(明治27)年11月
入力者ゆうき
校正者吉田亜津美
公開 / 更新1999-12-31 / 2014-09-17
長さの目安約 78 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

はしがき

 この小冊子は、明治二十七年七月相州箱根駅において開設せられしキリスト教徒第六夏期学校において述べし余の講話を、同校委員諸子の承諾を得てここに印刷に附せしものなり。
 事、キリスト教と学生とにかんすること多し、しかれどもまた多少一般の人生問題を論究せざるにあらず、これけだし余の親友京都便利堂主人がしいてこれを発刊せしゆえなるべし、読者の寛容を待つ。

  明治三十年六月二十日
東京青山において
内村鑑三
[#改頁]

再版に附する序言

 一篇のキリスト教的演説、別にこれを一書となすの必要なしと思いしも、前発行者の勧告により、印刷に附して世に公にせしに、すでに数千部を出すにいたれり、ここにおいて余はその多少世道人心を裨益することもあるを信じ、今また多くの訂正を加えて、再版に附することとはなしぬ、もしこの小冊子にしてなお新福音を宣伝するの機械と[#「機械と」はママ]なるを得ば余の幸福何ぞこれに如かん。

  明治三十二年十月三十日
東京角筈村において
内村鑑三
[#改頁]

改版に附する序

 この講演は明治二十七年、すなわち日清戦争のあった年、すなわち今より三十一年前、私がまだ三十三歳の壮年であったときに、海老名弾正君司会のもとに、箱根山上、蘆の湖の畔においてなしたものであります。その年に私の娘のルツ子が生まれ、私は彼女を彼女の母とともに京都の寓居に残して箱根へ来て講演したのであります。その娘はすでに世を去り、またこの講演を一書となして初めて世に出した私の親友京都便利堂主人中村弥左衛門君もツイこのごろ世を去りました。その他この書成って以来の世の変化は非常であります。多くの人がこの書を読んで志を立てて成功したと聞きます。その内に私と同じようにキリスト信者になった者もすくなくないとのことであります。そして彼らの内にある者は早くすでに立派にキリスト教を「卒業」して今は背教者をもって自から任ずる者もあります。またはこの書によって信者になりて、キリスト教的文士となりて、その攻撃の鉾を著者なる私に向ける人もあります。実に世はさまざまであります。そして私は幸いにして今日まで生存らえて、この書に書いてあることに多く違わずして私の生涯を送ってきたことを神に感謝します。この小著そのものが私の「後世への最大遺物」の一つとなったことを感謝します。「天地無始終、人生有生死」であります。しかし生死ある人生に無死の生命を得るの途が供えてあります。天地は失せても失せざるものがあります。そのものをいくぶんなりと握るを得て生涯は真の成功であり、また大なる満足であります。私は今よりさらに三十年生きようとは思いません。しかし過去三十年間生き残ったこの書は今よりなお三十年あるいはそれ以上に生き残るであろうとみてもよろしかろうと思います。終りに臨んで私はこの小著述をその最初の出版者たる故中…

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