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お母さんはえらいな
おかあさんはえらいな
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「定本小川未明童話全集 10」 講談社
1977(昭和52)年8月10日
入力者特定非営利活動法人はるかぜ
校正者仙酔ゑびす
公開 / 更新2012-04-07 / 2014-09-16
長さの目安約 3 ページ(500字/頁で計算)
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本文より


 いちばん下の勇ちゃんには、よくおなかをいためるので、なるべく果物はたべさせないようにしてありましたから、ほかの兄さんや、姉さんたちが、果物をたべるときには、勇ちゃんの遊びに出て、いないときとか、また夜になって、勇ちゃんが寝てしまってから、こっそりとたべることにしていました。
「僕、びわがたべたいのだけど。」
「私は、水蜜がたべたいわ。」
 兄さんや、姉さんたちは、果物の季節になると、いろいろおいしそうな、果物が、店頭に並ぶのを見てきて話をしました。
「晩に、勇ちゃんが休んでから、買ってきておたべなさい。」と、お母さんは、おっしゃったのであります。
 ところが、ある日のこと、お土産に、みごとなパイをもらったのでした。
「まあ、おいしそうね。」と、お姉さんが、いいました。
「お母さん、すぐに、切っておくれよ。」と、太郎さんが、いいました。
「果物がはいっているから、勇ちゃんは、たべていけないのですね。」と、二郎さんが、パイをながめながらいいました。
 さっきから、やはりだまって、おいしそうな大きなパイをながめていた、勇ちゃんは、これをきくと真っ赤な顔をして、二郎さんにとびつきました。
「そんなこと、あるもんか、僕、みんなたべるんだい。」と、けんかがはじまったのでした。
「ああ、これは、勇ちゃんもたべていいんですよ。」と、お母さんが、おっしゃったので、やっと勇ちゃんの怒りは解けましたが、
「僕、たくさんもらうんだ。」と、勇ちゃんが、がんばると、
「ずるいや、お母さん、公平に分配してくださいね。」と、二郎さんが、叫びました。
「お母さんは、いつも、公平に分配するじゃありませんか。」
 このとき、二郎さんが、メートル尺を持ってきたので、みんなは、笑い出しました。
 パイをたべた後で、お母さんは、たなからゼリビンズのはいった袋をおろして、四人の子供たちに、分けてくださいました。色とりどりな曲玉形のお菓子は、めいめいの前にあったさらの中でかがやいて見えました。
「僕のは、これんばかし。」と、太郎さんがいいました。
「姉ちゃんが、いちばんたくさんだ。」と、二郎さんがいいました。
「いいえ、みんなおんなじですよ。かんじょうをしてごらんなさい。」と、お母さんがいわれました。四人はかんじょうすると、いちばん小さい勇ちゃんのが、一つ多かっただけで、三人のゼリビンズの数はまったくおんなじだったのです。
「それごらんなさい。お母さんは、かんじょうしなくても公平でしょう。」
「お母さんは、えらいな。」と、子供たちは感心して目をみはりました。



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