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おかめどんぐり
おかめどんぐり
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「定本小川未明童話全集 10」 講談社
1977(昭和52)年8月10日
入力者特定非営利活動法人はるかぜ
校正者仙酔ゑびす
公開 / 更新2012-01-29 / 2014-09-16
長さの目安約 3 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 ねえやの田舎は、山奥のさびしい村です。町がなかなか遠いので、子供たちは本屋へいって雑誌を見るということも、めったにありません。三郎さんは、自分の見た雑誌をねえやの弟さんに、送ってやりました。
「坊ちゃん、ありがとうございます。弟は、どんなに喜ぶかしれません。」と、ねえやは、目をうるませて、いいました。
 すると、ある日のこと、弟の孝二くんから、たいそうよろこんで、手紙がまいりました。そして、山で拾った、くりや、どんぐりを送ると書いてありました。
「町が遠いのに、弟さんは、小包を出しにいったんだね。」と、三郎さんはききました。
「いえ、町へは、毎日、村から、だれかついでがありますから。」と、ねえやは、答えました。
 手紙のあとから、小包がとどきました。あけると、紫色のくりや、まるいどんぐりや、また、ぎんなんなどが、はいっていました。そして山から、いっしょについてきた、木の葉もまじっていました。これを見ると、ねえやは、子供の時分のことを思い出して、なつかしそうにながめていました。
「こんなのが、山にたくさんなっているの?」
「はい、たくさん、なっています。」
「いってみたいなあ。」と、三郎さんは、田舎の秋の景色を思いました。
 三郎さんは、さっそく、孝二くんに、礼をいってやりました。それから、そのうちに、また雑誌を送るからと書きました。
 しばらくたつと、孝二くんから手紙がきたのであります。
「なんといって、きたんだろうな。」
 三郎さんは、あけてよんでみると、
「送っていただいた、美しい雑誌を友だちに見せると、みんなが、奪い合って、たちまち、汚くしてしまいました。残念でなりません。また、送っていただいて、破るといけないから、どうか、もう送らないでください。」と、書いてありました。
「そんなに、あんな雑誌がめずらしいのかなあ。」
 三郎さんは、活動もなければ、りっぱな店もない、電車もなければ、自動車も通らない、にぎやかなものは、なに一つもない、田舎の景色を目にえがいて、そこに遊ぶ子供の姿を想像した。そのかわり、林が茂っていれば、美しい小川も流れています。
「僕たちだって、そのかわり、くりや、どんぐりを、拾うことができないのだから、おんなじこった。」と、三郎さんは思いました。
 三郎さんが、孝二くんの送ってくれた、どんぐりを、学校へ持ってゆくと、さあたいへんでした。みんなは、珍しがって、
「見せておくれ。」と、そばへ寄ってきました。
「君、このおかめどんぐりを、どこから拾ってきたんだい。」
「一個、おくれよ。」
「僕にもね。」
 みんなは、三郎さんのまわりにたかって、はなれないのでした。そのうち、奪い合いから、けんかをはじめたのであります。
 その晩、三郎さんは、考えました。
「田舎の子は、雑誌を見たいのだ。僕たち街の子は、おかめどんぐりがほしいのだ。かえっこす…

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