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おじいさんが捨てたら
おじいさんがすてたら
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「定本小川未明童話全集 10」 講談社
1977(昭和52)年8月10日
入力者特定非営利活動法人はるかぜ
校正者仙酔ゑびす
公開 / 更新2012-01-29 / 2014-09-16
長さの目安約 5 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 ある日、おじいさんはいつものように、小さな手車を引きながら、その上に、くずかごをのせて、裏道を歩いていました。すると、一軒の家から、呼んだのであります。
 いってみると、家の中のうす暗い、喫茶店でありました。こわれた道具や、不用のがらくたを買ってくれというのでした。
「はい、はい。」といって、おじいさんは、一つ一つ、その品物に目を通しました。
「この植木鉢も、持っていってくださいませんか。」と、おかみさんらしい人がいいました。
 それは、粗末だけれど、大きな鉢に植えてある南天であります。もう、幾日も水をやらなかったとみえて、根もとの土は白く乾いていました。紅みがかった、光沢のある葉がついていたのであろうけれど、ほとんど落ちてしまい、また、美しい、ぬれたさんご珠のような実のかたまった房が、ついていたのだろうけれど、それも落ちてしまって、まったく見る影はありませんでした。
「ああ、かわいそうに。」と、おじいさんは、思わずつぶやきました。
 これを聞くと、若いおかみさんは、「おじいさん、どうせその木は、だめなんですから、どこかへ捨てて、鉢だけ持っていってくださいな。」と、笑いながらいいました。
 このとき、おじいさんはまだ木に命があるかどうかと、まゆをひそめて枝などを折ってしらべていましたが、
「この木が助かるものなら、枯らすのはかわいそうです。」と答えました。
 おかみさんは、ただ笑って、だまっていましたが、心の中で、きっとやさしいおじいさんだと思ったでありましょう。それとも、そんなことを思う人でなかったかもしれません。
 やがて、おじいさんは、いろいろなものを買って、それを手車の上にのせました。南天の鉢ものせました。そして、ガラガラと引いて運び去りました。
 帰る道筋、おじいさんは、うつ向きかげんに歩いて、考えていました。
「あの店も、はやらないとみえて、店を閉めるのだな。しかし、生き物を、こんなに、ぞんざいにするようでは、なに商売だって、栄えないのも無理はない。」と、こんなことを考えたのであります。
 家に帰るとさっそく、木に水をやりました。また、わずかばかり残っていた、葉についているほこりを洗ってやりました。そして日のよく当たるところへ出してやりました。
 仕事をしていた、息子の嫁さんが出てきてこれをながめながら、
「おじいさん、その木は枯れてはいませんか。」とたずねました。
「枯れたのも同然のものだが、まだすこしばかり命があるらしい。私の丹誠で助けたいと思っている。」と、おじいさんは答えました。
 こうしたやさしいおじいさんでありますから、小さいもの、弱いものに対して、平常からしんせつでありました。
「正坊はどうしたか。」と、帰るとすぐに、孫のことをききました。
「いま、どこか外へ出て遊んでいます。」と、嫁さんは答えました。
「よく、気をつけて、けがを…

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