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子うぐいすと母うぐいす
こうぐいすとははうぐいす
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「定本小川未明童話全集 10」 講談社
1977(昭和52)年8月10日
入力者特定非営利活動法人はるかぜ
校正者酒井裕二
公開 / 更新2015-07-24 / 2015-05-24
長さの目安約 4 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 毎朝きまって、二羽のうぐいすが庭へやってきました。
「お母さん、きょうもまた、うぐいすがきましたよ。」
 正ちゃんは、ガラス戸から、こちらをのぞいていいました。
「餌をさがしにくるのです。」と、お母さんは、おっしゃいました。
「母うぐいすと、子うぐいすですね。」
「きっとそうでしょう。お山で生まれた子供をつれて、冬になったから里へきたのです。」
「かわいいな。」と正ちゃんは、見ていました。
 うぐいすは、赤い実のなった枝に止まったり、また常磐木の間をくぐったりして虫をさがしながら、チャッ、チャッと、いって鳴いていました。
「ああ、もういってしまった。」と、正ちゃんがいいました。そのうちに、兄さんや、姉さんが、学校から帰ってきました。うぐいすの話が出ると、
「明日、うぐいすをとってやろう。」と、兄さんがいいました。
「そんなことをするもので、なくってよ。」と、姉さんが、いいました。
「上手に飼うと、三月ごろいい声で鳴くぜ。」と、兄さんが、いいました。
 だまって、兄さんの話をきいていた正ちゃんは、うぐいすをかごの中に入れて、自分でかわいがって、飼ってみたくなりました。
「お兄さん、うぐいすをとっておくれよ。」と、正ちゃんは、頼みました。
「かわいそうだから、そんなことをしてはいけません。」と、お母さんが、おっしゃいました。
「じゃ、僕、はとを飼ってもらうよ。」
「いけません。」
「じゃ、犬を飼ってくれる?」
 正ちゃんは、なんといっても、いうことをききません。
「よし、明日、うぐいすをとってやろう。」と、兄さんが、いいました。
「そんな約束をして、もしとれなかったら、また大騒ぎですよ。」と、お母さんは、心配なさいました。
「なに、僕、うまくとってみせます。」と、兄さんは、正ちゃんに、約束をしました。
 いよいよ翌日のことでした。兄さんは、虫をかごの中へ入れて、うぐいすが、それを食べに止まると、上からふたの被さるような仕掛けにして、これをつばきの木の下に置きました。
 みんなが、忘れていた時分、
「うぐいすがかかっている!」と、正ちゃんが、叫びました。兄さんはすぐに飛んでいって、とったうぐいすを別のかごの中に移しました。
「まだ、子供だな。」と、小さいうぐいすを見ながら、兄さんがいいました。
「かわいそうだから、逃がしてやってよ。」と、姉さんが、いいました。
「逃がしちゃいけない。」と、正ちゃんが、ききません。
「おもしろいな、まだとれるぜ。」と、兄さんは、いまとったうぐいすに餌を造ってやってから、またつばきの下へ、捕りかごを出しておいたのでした。
「なんで、そんなにとれるものですか。」と、お姉さんが、いいました。そしてみんなが、ふろしきをかけた鳥かごを見ながら、かわいらしいなどと話をしていると、また、ばたばたといって、ほかのうぐいすがかかったのであります。

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