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子ざると母ざる
こざるとははざる
副題母が子供に読んできかせてやる童話
ははがこどもによんできかせてやるどうわ
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「定本小川未明童話全集 11」 講談社
1977(昭和52)年9月10日
初出「愛育 2巻11号」1936(昭和11)年1月
入力者特定非営利活動法人はるかぜ
校正者酒井裕二
公開 / 更新2017-01-06 / 2016-12-22
長さの目安約 5 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

 ある日、かりゅうどが山へいくと、子ざるが木の実を拾ってたべていました。もうじきに冬がくるので、木の葉は紅く色づいて、いろいろの小鳥たちが、チッ、チッ、といって鳴いていました。
 かりゅうどは、子ざるを見つけると、足音をたてぬように、近寄りました。
「はてな、子ざるひとりとみえるな。親ざるはどうしたろう?」
 あたりを見まわしたけれど、母ざるの姿は見えませんでした。
「きっと子ざるめが、母ざるの知らぬまに、遊びに出たのだ。鉄砲で打つのは、かわいそうだ。どれ、つかまえてやろう。」
 かりゅうどは、腰につけていた、つなで、おとしを造りました。そして、自分は、その端をにぎって、木の蔭に隠れていました。
 それとも知らずに子ざるは、木の実をさがすのに夢中になっていました。そのうちおとしの中へ入って、はっと思うまに、子ざるは、かりゅうどの手に捕らえられてしまいました。
 かりゅうどは、村へ帰ると、子ざるを家の前の木につないでおきました。すこし馴らして、町へ売りにいこうと思ったのです。
 村の子供たちは、見物にきて、芋を投げてやったり、かきを投げてやったりしました。子ざるは、上手にそれを受けて、食べていましたが、山の林で、拾ってたべた木の実のようにおいしくありませんでした。寒い西風が吹いて、木の枝が動くのを見ると、山のお家が恋しくなるのでした。
「お家へ帰りたいな。ひとりでは、道がわからないし、自分の力では、腰についている鏈を切ることができない。」
 子ざるの目からは、熱い涙がわきました。
 そこへ、つえをついて、白いひげのはえた、おじいさんがきました。
「孫たちがほしがるので、この子ざるを、私に売ってくださらないか。」といいました。
「おお、酒屋のご隠居さんですか。あなたが、このさるを買ってくだされば、私は、町へ持っていく骨おりなしにすみます。」と、かりゅうどは、答えました。
 子ざるは、こうして、その日から、酒屋の正ちゃんや、かね子さんの遊び相手となったのです。
 かね子さんも、正ちゃんも、どちらも欲張りでした。
「このおさるは、僕のだよ。」と、正ちゃんがいうと、
「いいえ、このおさるさんは、私のよ。」と、かね子さんがいいました。
「ちがうよ、僕のだから。」
 二人は、たがいにいい争って、祖父さんのところへききにきました。
 祖父さんは、ただ笑って、返事にお困りになりました。
「さあ、だれのだろうな。それは、おさるさんにきいてみるのが、いちばんいい。」と、祖父さんは、おっしゃいました。二人は、こんどは、子ざるのところへまいりました。
「おさるさん、僕のだねえ。」と、正ちゃんが、いいました。
「おさるさん、私のだわねえ。」と、かね子さんが、いいました。
 りこうな子ざるも、やはり返事に困って、しばらく頭をかしげて考えていましたが、
「私は、私をいちばんかわいがってくだ…

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