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正ちゃんとおかいこ
しょうちゃんとおかいこ
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「定本小川未明童話全集 10」 講談社
1977(昭和52)年8月10日
入力者特定非営利活動法人はるかぜ
校正者酒井裕二
公開 / 更新2015-07-31 / 2015-05-24
長さの目安約 5 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 東京の町の中では、かいこをかう家はめったにありませんので、正ちゃんには、かいこがめずらしかったのです。
「かわいいね。ぼくにもおくれよ。」といって、学校へお友だちが持ってきたのを三匹もらいました。
 そして、だいじにして、紙に包んで、お家へ持ってかえると、みんなに見せました。
「あたし、こわいよ。」と、妹のみつ子がにげだしました。
「私も、はだか虫はきらいです。どうしてこんなものをもらってきたの?」と、お母さんがおっしゃいました。
 正ちゃんのほかにはだれも、あまりかいこをかわいらしいというものはありませんでした。
「兄さん、どっかへ持っていってよ。」と、妹がたのみました。
「こんなにおとなしいのに、かわいそうじゃないか。」
「正ちゃん、おとなしいのではないのよ。しっかり紙に包んできたから、よわったんでしょう。」と、お姉さんがいいました。
「おまえ、くわの葉がなくてどうするつもり?」と、お母さんがおっしゃいました。
 くわの葉は、正ちゃんが、もうちゃんと野村くんからもらうやくそくがしてありました。野村くんの家はすこしとおかったけれど、かきねに二本のくわの木があって、それをいくら取ってもいいというのでした。
「くわの葉は、もらうやくそくがしてあるんだよ。」
「まあ、手まわしがいいのね。」
「だからお母さん、かってもいいでしょう。」と、正ちゃんは賛成してくれるものがないので、心ぼそくなりました。
「みつ子がこわがるから、はこに入れて、物置の内にでもおおきなさい。」
 正ちゃんは、おかしの空きばこをもらって、くわの葉をきざんで入れて、石炭ばこの上にのせておきました。
 晩方、正ちゃんが外からあそんでかえってきてみると、いつしかくわの葉はしおれてしまって、二匹は死んで、あとの一匹だけが、はこのすみにじっとしていました。
「どうして死んだのだろうな。」
 正ちゃんは赤いじてん車にのって、死んだかいこを川にながしにいきました。そのかえりに、あたらしいくわの葉をもらってきました。
 あくる日のことでした。学校で先生が正ちゃんに、
「きのうのかいこをどうしたか?」と、おききになりました。
 正ちゃんは、二匹死んでしまって、いま一匹しか生きていないことを話しました。すると、やさしい先生は、
「一匹ではさびしいな。学校でかっているのをかえりに一匹あげるから、もっておいで。」と、いってくださいました。
 正ちゃんは時間がおわると、先生のところへまいりました。
「さあ、こうして持っていくといい。」
 そういって、先生は大きなくわの葉の上に一匹のかいこをのせてくださいました。そのかいこは、正ちゃんの家にいるのよりかずっと元気でした。
 正ちゃんは葉の上にのせてもらったのをおとさないように、両手でささえながら、学校からお家へかえってきますと、みちをとおる人々は、なんだろうと、正ちゃん…

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