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ちょうせんぶなと美しい小箱
ちょうせんぶなとうつくしいこばこ
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「定本小川未明童話全集 10」 講談社
1977(昭和52)年8月10日
入力者特定非営利活動法人はるかぜ
校正者酒井裕二
公開 / 更新2015-08-19 / 2015-05-24
長さの目安約 6 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 正吉くんは、はじめて小田くんの家へあそびにいって、ちょうせんぶなを見せてもらったので、たいそうめずらしく思いました。
「君、この魚はどこに売っていたの?」
「このあいだ、おじいさんが売りにきたのを買ったのだよ。」と、小田くんはいいました。
「こんどきたら、ぼくも買おうかな。」と、正吉くんは、あかずに、ちょうせんぶなのダンスをするのをながめていました。
「それよか君、あしたいっしょに魚つりにいこうね。」と、小田くんはいいました。
「ぼく待っているから、君、さそってくれたまえ。」
「ああ、お昼すぎになったら、じきにいくからね。」
 二人は、こうおやくそくをして、正吉くんはやがてお家へかえっていきました。途中に大きなかしの木がありました。その下で、金魚売りのおじいさんが休んでいました。
「あのおじいさんではないかしら。」と、正吉くんは思いました。
 ちかづいて、たずねました。
「おじいさん、ちょうせんぶなあるの?」
 たばこを吸っていたおじいさんはにこにこしながら、
「ええ、ありますよ。」と、答えました。
「いくらですか?」
「三匹十銭におまけしておきますよ。」と、おじいさんはいいました。
 それを聞くと、正吉くんは、お家へ走ってかえってきました。
「お母さん、ちょうせんぶなを買うのだからお金をちょうだい。」と、ねだりました。
「ちょうせんぶななんてあるのですかね。」と、お母さんはおっしゃいました。
「とてもおもしろいですよ。ちょうどあたりまえのふなみたいなかたちで、水の中を上へのぼったり、下へおりたりして、かわいらしいのだから。」といって、小田くんのところで見てきたちょうせんぶなの説明をいたしました。
 そこへ、姉さんのとき子さんが出てきて、この話をききました。
「私も知っているわ。正ちゃんは、ちょうせんぶなを買ってきてどこへ入れるつもり?」と、とき子さんはききました。
「うちの水盤の中へ入れるよ。入れてもいいだろう?」と、正吉くんは姉さんの顔を見ました。
 なぜなら、水盤は自分ひとりのものではなくて、きょうだいたちみんなのものであったからです。
「いけないわ。ちょうせんぶななんか入れては金魚をみんな食ってしまうじゃないの。」と、とき子さんは反対しました。
「金魚なんか食べるものか。」
「正ちゃんはまだ知らないのよ。太田さんのお家にもちょうせんぶながいたけれど、おなかがすくと、共食いをはじめて、強いちょうせんぶなが、ほかの弱いのをみんな食べてしまったというのよ。」
「そして、どうしたの?」
「その強いのが、いつのまにかどこかへいってしまって、いなくなったというのよ。」
「ねこに食われたんだね。」
「羽があるからとんでいったんだって、太田さんがいっていたわ。」
 こんな話をきくと、正吉くんは、なんだか自分にもいやな魚のように思えたけれど、またそれだけかってみたい…

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