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はちの巣
はちのす
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「定本小川未明童話全集 10」 講談社
1977(昭和52)年8月10日
入力者特定非営利活動法人はるかぜ
校正者酒井裕二
公開 / 更新2015-08-09 / 2015-05-24
長さの目安約 9 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 ある日、光子さんは庭に出て上をあおぐと、青々とした梅の木の枝に二匹のはちが巣をつくっていました。
「おとなりの勇ちゃんが見つけたら、きっと取ってしまうから、私、知らさないでおくわ。」
 そう思って見ていますと、一匹ずつかわるがわるどこかへとんでいっては、なにか材料をくわえてきました。そして、一匹がかえってくると、いままで巣にとまって番をしていたのがこんどとんでいくというふうに、二匹は力をあわせてその巣を大きくしようとしていたのです。
 そののち、光子さんは毎日梅の木の下に立って、その巣の大きくなるのを見るのがなんとなくたのしみでありました。
「もう、今日はあんなに大きくなった。」
 しかし、それはほんとうにすこしずつしか大きくならなかったのです。二匹のはちが小さな口にくわえてきた材料を、自分の口から出るつばでかためていくのでありましたから、なかなかたいへんなことです。けれど、はちは、たゆまずうまずに、朝も晩も巣をつくることに、いっしょうけんめいでありました。
 ところが、どうしたことか、そのうち巣にとまっているのがいつも一匹であって、もう一匹のすがたが見えなくなったことです。
「どうしたんでしょう?」と、光子さんはしんぱいになりました。
 光子さんはお母さんのところへ走っていきました。
「ねえ、お母さん、はちが一匹いないのよ。いつも二匹のがどうしたんでしょうね?」といって、きいたのであります。
「そうね、きっとそのうちにかえってくるでしょう。」と、お母さんにもすぐにはわからなかったのでした。
「もう、ずっとかえってこないの。一匹がさびしそうにしているの。」と光子さんは、なんだかひとりのこされたはちの身の上を思うと、気が気でなかったのです。
「どうしたんでしょうね。いたずらっ子にでも殺されたか、悪いくもの巣にでもかかって、かえれないのかもしれません。」と、お母さんはおっしゃいました。
 ――悪いくも――ということが、すぐに光子さんの頭に強くひびいてきました。いつであったか、ひさしから木の枝にかけていたくもの巣に、はちがかかって、とうとうくものために殺されたのを見たことがあったからです。また、その巣には、せみもかかれば、ちょうもかかったのでした。さいしょ、これらの虫がとんできて、目に見えない細い糸に足をとらえられると、逃げようとしてもがきます。しかし、いくらあせっても、もちのように糸がねばりついて、足にからみつくばかりです。そのうちに、虫は弱ってしまう、そのとき、どこからか黒い大きなくもがあらわれてきて、するどい口で生き血を吸ってしまうのでありました。
 そのありさまを思いだすと、この勤勉なはちもそんなめにあったのではないかと、いたましいすがたが想像されたのです。そればかりではありません。また――いたずらっ子に殺される――というしんぱいも、ないではなかったので…

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