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猟師と薬屋の話
りょうしとくすりやのはなし
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「定本小川未明童話全集 10」 講談社
1977(昭和52)年8月10日
入力者特定非営利活動法人はるかぜ
校正者仙酔ゑびす
公開 / 更新2012-04-18 / 2014-09-16
長さの目安約 8 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 村に一人の猟師が、住んでいました。もう、秋もなかばのことでありました。ある日知らない男がたずねてきて、
「私は、旅の薬屋でありますが、くまのいがほしくてやってきました。きけば、あなたは、たいそう鉄砲の名人であるということですが、ひとつ大きなくまを打って、きもを取ってはくださらないか。そのかわり、お金はたくさん出しますから。」といいました。
 猟師は、貧乏をしていましたから、これはいい仕事が手にはいったと思いました。
「そんなら、くまをさがしに山へはいってみましょう。」
「どうぞ、そうしてください。このごろ、くまのいが、品切れで困っているのですから、値をよく買いますよ。」と、薬屋はいいました。
 これをきいて、猟師は、よろこんで引き受けました。
 村から、西にかけて、高い山々が重なり合っていました。昔から、その山にはくまや、おおかみが棲んでいたのであります。
 猟師は、仕度をして、鉄砲をかついで山へはいってゆきました。霧のかかった嶺を越えたり、ザーザーと流れる谷川をわたって、奥へ奥へと道のないところをわけていきますと、ぱらぱらと落ち葉が体に降りかかってきました。
 猟師は、しばらく歩いては耳をすまし、また、しばらく歩いては耳をすましたのです。そして、あたりに、猛獣のけはいはしないかと、ようすをさぐったのでした。
 そのうちに、目の前に、大きな足跡を見つけました。
「あ、くまの足跡だ!」と、猟師は思わずさけびました。
 これこそ、天が与えてくださったのだ。はやく打ちとめて家へしょって帰ろう。そうすればきもは、あの旅の薬屋に高く売れるし、肉は、村じゅうのものでたべられるし、皮は皮で、お金にすることができるのだ。こう思いながら、肩から、鉄砲をはずして、弾丸をこめて、その足跡を見失わないようにして、ついてゆきました。
 裏山は、雲が切れて、秋の日があたたかそうに照らしていました。そして、二、三十メートルかなたに、大きなとちの木があって、熟した実がぶらさがっていましたが、その下に黒いものがしきりに動いているのを見つけたのです。
「いた! いた!」と猟師は、低い声でいいました。そして、じっと気づかれないように木かげにかくれて、ようすをうかがいました。その一匹は大きく、その一匹は小さかったのです。小さいのは、まだ生まれてから日数のたたない子ぐまで、大きいのは、母ぐまでした。二匹は、いま自分たちが、人間にねらわれているということもしらずに、楽しく遊んでいたのであります。子ぐまは、お乳を飲みあきたか、それとも、とちの実をたべあきたか、お母さんの背中に乗ったり、また、胸のあたりに飛びついたりしました。母ぐまは、それをうるさがるどころか、かわいくて、かわいくて、しかたがないというふうに、子ぐまのするままにしていたが、ときどき、自分でひっくりかえって、子ぐまを上に抱きあげ、子ぐまが…

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