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『火星兵団』の作者の言葉
『かせいへいだん』のさくしゃのことば
作品ID52238
著者海野 十三
文字遣い新字新仮名
底本 「海野十三傑作集3 火星兵団」 桃源社
1971(昭和46)年9月25日
入力者ハチミツ
校正者小林繁雄
公開 / 更新2011-02-09 / 2014-09-21
長さの目安約 8 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

 この書『火星兵団』は、私がこれまでに書いた一等長い小説であります。
 少国民新聞(今は名前もなつかしい当時の「小学生新聞」)に、前後四百六十回にわたって連載されたもので、作者としても、これを完成するのに、精根をつくしました。

この小説のすじがき

 この『火星兵団』の筋は、ある年、とつぜん地球にモロー彗星が接近し、そしてやがて地球に衝突するだろうということが分り、二十億年という永い歴史をもつ地球が、ここにかなしき崩壊をとげなければならぬことになりまして、世界は大さわぎを始めました。その折しも、この地球のさわぎを知った火星の生物が、地球の崩壊前に人類やその他の動植物を手に入れ、火星へ持ってかえって、人類や動物は、これを家畜とし、植物も新しい資材として利用しようと思い、ここに火星兵団を編成して、地球へ攻めてくるのです。そのために、わが地球は、二重の危機をひきうけることとなるのですが、不屈の精神と、優れた科学力を持った人類は、ついにこの難局を切り抜けるというのが大体の筋であります。
 なぜ私が、こんな筋の少年科学小説を書いたかということについて、すこしく説明をさせていただきましょう。

皆さんを科学に総動員したい

 まず第一に、私の考えましたことは、今日の時代ほど、わが日本が、急いで多数の科学者や技術者をほしがっている時期は、他にないのであります。皆さんもよく御承知のとおり、いまや全世界は、二つに分れて、世界戦争を始めかけています。今度の大戦は、どっちかを完全に叩きのめしてしまうまでは、やめにならないでしょう。そして勝敗いずれかの鍵は、民族的精神の強弱と、そしてもう一つは、科学力の強弱にかけられていると申してもよろしいのです。わが日本は、幸いにして、御稜威のもとに、建国二千六百余年の光輝ある国史をもち、軍人は忠勇無双、銃後国民も亦すこぶるりっぱです。この点ではどこの国にも負けません。しかしながら、ただ残念なことに、わが国の科学力は、正直な話が、たいへん貧弱であります。私どもは、日本の工業力が躍進したとか、日本人が世界的発明をしたとか耳にしますが、これを全体的に考え、かつしずかにおちついて調べてみますと、わが国一般国民の科学力は、とても一等国らしいところはなく、三等国以下ではないかと思われる節もあります。私も、実は工科学生として永い間勉強し、それから後十八年間も技術者として仕事をしてまいりました関係上、そこらのことは、よく存じているつもりであります。
 そのような貧弱な科学国が、今度いよいよ国の運命を定める世界戦争に、うって出なければならなくなったのです。しかも、これまでならば、旧日本とでも申しますか、日本内地と植民地とそして満洲ぐらいを護っていればよかったのが、ここへ来まして、わが国の生命を安全に保つには、どうしても大東亜を日本が自ら親しく護り、かつ導かねば…

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