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甘話休題
かんわきゅうだい
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「ロッパの悲食記」 ちくま文庫、筑摩書房
1995(平成7)年8月24日
入力者門田裕志
校正者仙酔ゑびす
公開 / 更新2012-01-10 / 2014-09-16
長さの目安約 15 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

[#挿絵]

 もう僕の食談も、二十何回と続けたのに、ちっとも甘いものの話をしないものだから、菓子については話が無いのか、と訊いて来た人がある。僕は、酒飲みだから、甘いものの方は、まるでイケないんじゃないか、と思われたらしい。
 ジョ、冗談言っちゃいけません。子供の時は、酒を飲まないから、菓子は大いに食ったし、酒を飲み出してからだって甘いものも大好き。つまり両刀使いって奴だ、だからこそ、糖尿病という、高級な病いを何十年と続けている始末。
 じゃあ、今日は一つ、甘いものの話をしよう。今両刀使いの話の出たついでに、そこから始める。
 僕は、いわゆる左党の人が、甘いものは一切やらないというのが、何うも判らない。
 然し、まんざら、酒飲み必ずしも、甘いものが嫌いとは限らない証拠に、料理屋などでも、一と通り料理の出た後に、饅頭なぞの、菓子を出すではないか。
 あれが僕は好きでね。うんと酒を飲んだ後の甘いものってのは、実にいい。
 殊に、饅頭の温めた奴を、フーフー言いながら食うのなんか、たまらない。
 アンコのものでも、ネリキリじゃあ、そうは行くまいが、饅頭系統のものは、温めたのに限る。京都の宿屋で、よくこれを朝出すが、結構なもんだ。
 と、話は餅菓子、和菓子に及んだが、僕は、洋菓子党です。
 子供の時から、ビスケットや、ケーキと呼ばれる洋菓子を愛し、今日に至っても、洋菓子を愛している。子供の頃、はじめて食べた、キャラメルの味から、思い出してみよう。
 森永のキャラメルは、今のように紙製の箱に入ってはいず、ブリキ製の薄い缶に入っていたと覚えている。そして、キャラメルそのものも、今の如く、ミルク・キャラメルの飴色一色ではなく、チョコレート色や、オレンジ色のなど、いろいろ詰め合せになっていた。
 味も、ぐっとよくて、これは、森永さんとしては、はじめは、高級な菓子として売り出したものではないかと思う。
 ブリキの缶には、もうその頃から、羽の生えた天使のマークが附いていた。
 森永のミルク・キャラメルに前後して、森永パール・ミンツなどという、これは庶民的なキャンディーも売り出された。
 これらの菓子は、種苗などを入れるような紙の袋に入っていた。
 小学校の遠足に、それらの菓子が如何にもてはやされたか。
 キャラメルも、ネッスルのや、その他色々出来たし、水無飴もその頃出来た。
 チュウインガムが流行り出したのも、その頃。
 その頃というのは明治末期のこと。
 さて然し、それらはみんな庶民的な、西洋駄菓子であって、贅沢なおやつには風月堂のケーキ、青木堂のビスケットなどが出たものである。
 風月堂の、御進物用の箱を貰った時の悦びを忘れない。上等なのは、桐の箱入りで、デコレーションの附いた、スポンジケーキが、ギッシリと詰っていて、その上へ、ザーッと、小さな銀の粒や、小さな苺の形をしたキ…

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