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第二海豹と雲
だいにかいひょうとくも
著者
文字遣い新字旧仮名
底本 「白秋全集 5」 岩波書店
1986(昭和61)年9月5日
入力者岡村和彦
校正者大沢たかお
公開 / 更新2012-10-29 / 2014-09-16
長さの目安約 13 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

古代新頌



懸巣

飛べよ、深山懸巣、
神神はまた目ざめぬ。
磐が根に注連縄ひきはり、
幣帛にしで結ひ垂れ、
真榊の、鏡葉の音さやさやに
うち清めて。

啼けよ早や深山懸巣、
日は若し、かの稚神、
ひむがしはすでにかぎろふ。

菊盛り

少女たち、黄菊には古代のかをりがある。
純粋に日本の寂びと気品がある。
ああ、この静かな菊の香の苑に坐らう。

少女たち、黄菊には九重のみけしきがある。
雲の上の日と月のにほひもする。
わかい帝の御いきづかひが聞える。

少女たち、黄菊には御鏡の明りがある。
森厳な賢所のみけはひも澄む。
皇后宮も白い唐衣でお出ましになる。

少女たち、黄菊には紫宸殿の午後が光る。
高御倉の金の鳳、玉旛の玉や、青地錦、
かうがうしい黄櫨染の御袍も拝される。

少女たち、黄菊には聖駕の軋みもこもる。
儀仗兵の旗槍もちらちらつづく。
ああさうして、日本の民族の新らしい祝福が来る。


白き花鳥図



みづのうへ

しろがねのさざなみみれば
くれなゐのはちすのにほひふふむらむ。
つくばえのあかれるみれば、ささにごり、
おしどりのつがひのおよぎしぬばるる。
はてなきかもよ、よひよひの
みのわひろごるわがこころ。


風を祭る



冬の野

寂びつくす冬のながめを
小さき騎士馬駈けにけり。
いまぞ撤け、黄の飛行船、
消息の銀のちらちら。

十月の都会風景

十月、
大都会東京の午後一時二時、
日光がばかに白かつた、立体的で。
市民は高層なビルヂングの近景を、
いつもの通り右往左往してゐた、豆のやうに、
紅や青や紫や、パラソルの花、花、花、
自動車は疾駆した、旋廻した、昆虫の騒乱。

俺は空想した。ああ、この瞬間。
カーキ色の飛行船が爆発した、空の遥かで。
ぷすとただ光つて消えた点、――人、人、人。

十月、
誇張すると天を摩す屋上庭園の酒卓で
俺は古風な遠眼鏡を引伸ばしながら、
いつか失くした童心を探索してゐる。


珠数工の夜



良夜

よい花は空気をおくる。
落下傘月から放つ。
ああ、よいむすめよ、
今晩は笛が鳴ります。

孔雀

青い孔雀の白い脛、
月はその爪みがいてる。

扇の冠、緑玉、
そよりともせぬ闇のうち。

丈の濃青の、頬の横を、
蒸すは黝朱の初夜の雲。

秘めよ、女性よ、すくなくも、
樫は花時、夜の時。

ああ、月は射す、刻刻に、
光は膝を匍ひのぼる。

張れよ、孔雀よ、尾の羽根の
渦の金紗の濃むらさき。

夜ふかき墓地

夜ふかき墓地に
音して、
ささとし、
落つる花あり。

幻ならず、
雲間に
むらがる霊の
しづまり。

闌けたり、
花はおどろく、
ささとし、
しきり落ちつつ。

梢よ、
月に照られて、
音あり、
暗き葉をうつ。

歩みつつ

聖上の御悩重らせたまひぬ。
ああ、日の暮、
寒靄に人ゆき消え、
立木くろずみ…

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