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古川ロッパ昭和日記
ふるかわロッパしょうわにっき
副題03 昭和十二年
03 しょうわじゅうにねん
著者
文字遣い新字旧仮名
底本 「古川ロッパ昭和日記〈戦前篇〉 新装版」 晶文社
2007(平成19)年2月10日
入力者門田裕志
校正者野口英司、仙酔ゑびす
公開 / 更新2014-05-18 / 2014-09-16
長さの目安約 216 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

昭和十二年一月



一月一日(金曜)
 雨かと思はれた天気も先づ元旦の薄陽ざし、十一時起き。入浴して、さっぱりしたとこで、雑煮、屠蘇。二時から舞台稽古、「歌ふ弥次喜多」の道具調べと久富に動きをつける。五時半開演、楽屋で弁当食ふ。序幕の開く頃、売切、補助が出て大満員となる。「昇給」初日から此の位乗って来れば大したものなり。「人生」の歌終って、すぐ「弥次喜多」、久富の喜多さんに気を使ひ通し、ふわ/\っとした喜多さんで随分苦労した。が、まあ/\大過なく十時十五分無事に閉演。今日の舞台で、名古屋の客を段々興味深く見るやうになった。「歌ふ弥次喜多」の中、道頓堀の場で、「赤い灯青い灯道頓堀の河面に集る夢の灯に何でカフェが忘らりょかーって、百人一首でも有名な、あのカフェー」ってセリフが、百人一首のとこでワッと受けた、これは有楽座では、てんでクスリとも来なかったセリフだのに、ワッと来たので実に意外だった。インテリ層多しと見るべきか、面白い。御園座へ来てる曽我廼家十吾・天外によばれて南呉服町の三木てうちへ行く。ビールをのみ、鳥のすきやき、まづかった。一時半宿へ帰り、床へ入る。心配してた咽喉いゝらしく、嬉しい。
 年三十五、大人である。分別はあるか、なくもなからう。三十五である。三十五である。


一月二日(土曜)
 十一時起き、福富って宿は貧弱で、風呂小さく朝の気分ゼロ。その上朝食と対面させられては悲しいので、近くの名古屋観光ホテルへ行くと、小林千代子・片岡鉄兵がいて一緒にグリルへ。ハムエグストーストと、ミニツステーキ、わりにいゝ。それから小松屋へ柳を見舞ふ。昼、十二時開演、売切、補助も出切り。「昇給」も「人生」も大受け、「弥次喜多」久富が、けい古なしの素人だから怒れないが鈍で、やり切れない。全く徳山を怨む。昼終り、今日からアラスカが開いたので行き、フレンチオルドヴルとうまいポタアジュ、メンチボールの不出来。座へ帰ると、夜も満員、昼夜各二千八百円もあがった由。大した景気。夜も「弥次喜多」でクサり、宿へ帰って日記。片岡鉄兵よりウイスキー一壜届いた。宿で夜食出たが魚ばかりで食へないので、まづい洋食をとり、麻雀二荘、三時になった。少し勝つ。
 徳山から聖路加病院よりの手紙、元気らしく京都には間に合ひさうである。句に曰く、病院の屠蘇牛乳少しのみ。


一月三日(日曜)
 十一時半眼がさめる、旅に出ると自づと起きるのは不思議である。宿屋の食事は、とても妥協出来ないので、宿だけってことにして貰ふ。観光ホテルのグリルで、豆のポタージュとフライエグス、クラブハウス。座へ出る。今日は昼の「昇給」が全国中継になる(70)。筋は簡単だが動作で笑ふとこが多いから、客の笑声をうんと入れることに努力、之は大分成功したやうだ。昼の終りにアラスカへ、こっちへ仕事で来た藤山一郎と二人で行き、一円半の定食を食…

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