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古川ロッパ昭和日記
ふるかわロッパしょうわにっき
作品ID52693
副題05 昭和十四年
05 しょうわじゅうよねん
著者古川 緑波
文字遣い新字旧仮名
底本 「古川ロッパ昭和日記〈戦前篇〉 新装版」 晶文社
2007(平成19)年2月10日
入力者門田裕志
校正者仙酔ゑびす
公開 / 更新2013-11-08 / 2014-09-16
長さの目安約 215 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

昭和十四年一月



一月一日(日曜)
 起床十二時。屠蘇・雑煮。母上・道子同道出かける。中野実出征留守宅へ「新婚二人三脚」の脚本料を届けに行く。それから雑司ヶ谷墓地に参り、三時に東宝グリルへ行く。一座の新年祝賀会である。座員一同揃ひ、君ヶ代を歌ふ。天皇陛下万才を三唱して、座へ出る。補助椅子も売り切れたさうで、去年より一層いゝ入りらしい。今年第一回の芝居が始まる。「松の一番」が、まづ受けた。二が「新婚二人三脚」これはひどい本故、めちゃくちゃをやって、わけもなく笑って貰ふより手はないと思ひ、例の半白痴的ハリキリボーイでやる。それがワッと来るので、杉寛の腰かけてる上へ、飛びついてみたりして、ます/\笑はせる。次が「遠山の金さん」、かなり安心してゐたのだが、思ったほどには受けない、僕が又悪く芝居にしすぎて、こはし損った感じもある。四が「ロッパフォリース」後半がいけなかった、特別出演のあきれたぼういずが、まあ/\受けてゐるが、タップの稲葉や歌の豊島珠江は一つも手がとれない。僕の「豪快ぶし」がクサリで、歌ふ気がしない。「フォリース」の作・編曲の鈴木静一もしきりにクサってゐる、井田一郎の指揮がクサリの大きな原因だ。帰宅してウイスキー少々のむ。


一月二日(月曜)
 十二時に座に着く。補助も出切りの超満員である。「新婚二人三脚」は、馬鹿なことをすればする程受けるので、舞台で「そんなに可笑しいかな」と役者同志が話すほどだ。「遠山の金さん」セリフが、まだ入ってゐないのでヘドモドする、現代物なら何とかヨタでつなげるが、七五調めいては、さう/\ヨタも吹けない。「ロッパフォリース」何うもいけない。夕食は楽屋でふた葉の親子丼をかき込む。夜の部補助ビッシリ、「新婚」大受け、芝居最中、ズボンがスル/\と落ちたのには驚いた、馬鹿な話。「ロッパフォリース」の歌が気に入らず、ハネてから鈴木静一速製のをけい古する。十二時近く帰宅。楽屋へ、藤山一郎・マルセル・ルキエン等来訪。
 脚本では全く分らないものだとつく/″\思ふ、陣屋八太郎作の「遠山の金さん」がいけなくて、「新婚二人三脚」がいゝとは誰も思はなかったらう。


一月三日(火曜)
 十二時開演、びっしり超満員。井田一郎の指揮は、一々キッカケを外すのでクサリ、終って演出者と井田を呼んで充分叱る。「ロッパフォリース」は、あきれたぼういずの楽屋入りがおくれ、そこを抜いたので、着換へが間に合はぬやら、いろ/\ゴタついてしまひ、稽古のし直しだと怒る。昼が五時前にとれた。スコットのビフシチュウとライスカレー。吉岡社長ごきげんで、いろ/\話などして行った。夜も、むろん唸る満員。「新婚」のよく笑ふこと全く呆れるべし。又々音楽トチる、井田ではダメだ。「フォリース」では、昨夜けい古した「ハリキリ」を歌ひ、「豪快」を引込める。川口松太郎来り例の調子で「あきれたぼ…

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