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十二支考
じゅうにしこう
副題02 兎に関する民俗と伝説
02 うさぎにかんするみんぞくとでんせつ
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「十二支考(上)〔全2冊〕」 岩波文庫、岩波書店
1994(平成6)年1月17日
初出兎に関する民俗と伝説「太陽 二一ノ一」博文館、1915(大正4)年1月<br>(付)兎と亀との話「牟婁新報」1915(大正4)年1月1日、4日
入力者小林繁雄
校正者曽我部真弓
公開 / 更新1999-07-05 / 2016-05-23
長さの目安約 38 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 この一篇を綴るに先だち断わり置くは単に兎と書いたのと熟兎と書いた物との区別である。すなわちここに兎と書くのは英語でヘヤー、独名ハーセ、ラテン名レプス、スペイン名リエプレ、仏名リエヴル等が出た、アラブ名アルネプ、トルコ名タウシャン、梵名舎々迦、独人モレンドルフ説に北京辺で山兎、野兎また野猫児と呼ぶとあった。吾輩幼時和歌山で小児を睡らせる唄にかちかち山の兎は笹の葉を食う故耳が長いというたが、まんざら舎々迦てふ梵語に拠って作ったのであるまい。兎を野猫児とはこれを啖肉獣たる野猫の児分と見立てたのか。ただしノルウェーの兎は雪を潜って[#挿絵]鼠を追い食う(一八七六年版サウシ『随得手録』三)と同例で北京辺の兎も鼠を捉るのか知れぬ。日本では専ら「うさぎ」また「のうさぎ」で通るが、古歌には露窃てふ名で詠んだのもある由(『本草啓蒙』四七)。また本篇に熟兎と書くのは英語でラビット、仏語でラピン、独名カニンヘン、伊名コニグリオ、西名コネホ、これらはラテン語のクニクルスから出たので英国でも以前はコニーと呼んだ。日本では「かいうさぎ」、また外国から来た故南瓜を南京というごとく南京兎と称う。兎の一類はすこぶる多種でオーストラリアとマダガスカルを除き到る処産するが南米には少ない。日本普通の兎は学名レプス・ブラキウルス、北国高山に棲んで冬白く化けるやつがレプス・ヴァリアビリス、支那北京辺の兎はレプス・トライ、それから琉球特産のペンタラグス・フルネッシは耳と後脚がレプス属の兎より短くて熟兎に近い。一八五三年版パーキンスの『亜比西尼住記』にもかの地に兎とも熟兎とも判然せぬ種類が多いと筆し居る。熟兎はレプス等の諸兎と別に一属を立てすなわちその学名をオリクトラグス・クニクルスという。野生の熟兎は兎より小さく耳と後脚短く頭骨小さくて軽い。しかのみならず兎児は毛生え眼開いて生まれ、生まるると直ぐに自ら食を求めて親を煩わさず自活し土を浅く窪めてその中に居るに、熟兎児は裸で盲で生まれ当分親懸り、因って親が地下に深く孔を掘り通してその裏で産育する、一八九八年版ハーチングの『熟兎篇』に拠ると原と熟兎はスペイン辺に産しギリシアやイタリアやその東方になかった。古ユダヤ人もこれを知らずしたがって『聖書』に見えず、英訳『聖書』に熟兎とあるはヘブリウ語シャプハンを誤訳したのでシャプハン実は岩兎を指すとある。岩兎は外貌が熟兎に似て物の骨骼その他の構造全く兎類と別で象や河馬等の有蹄獣の一属だ。この物にも数種あってアフリカとシリアに産す(第三図[#図は省略]は南アフリカ産ヒラクス・カベンシス)。巌の隙間に棲み番兵を置いて遊び歩き岩面を走り樹に上るは妙なり、その爪と見ゆるは実は蹄で甚だ犀の蹄に近い(ウッド『博物画譜』巻一)。却説兎と熟兎は物の食べようを異にす、たとえば蕪菁を喫うるに兎や鼠は皮を剥いで地に残し身のみ食うる、熟兎…

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