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花束一つ
はなたばひとつ
作品ID52770
著者牧野 信一
文字遣い新字旧仮名
底本 「牧野信一全集第三巻」 筑摩書房
2002(平成14)年5月20日
初出「新進傑作小説全集月報 第四号」平凡社、1929(昭和4)年7月15日
入力者宮元淳一
校正者門田裕志
公開 / 更新2011-08-24 / 2014-09-16
長さの目安約 1 ページ(500字/頁で計算)

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本文より


 彼は、不断に巨大な都市の建設に余念がない。あの都は何んな細道を覗いても花飾美と瑰奇美と新鮮美に溢れてゐる。あの市長は一個の煉瓦に至るまで恭々しく自らの手で焼き、一つ一つ自分で積みあげて、塔を建て、ビルヂングを建てゝゐる目醒しい努力家だ。たゞの努力ではない、努力だけでは彼の町は出来ない。独特な才能を持つた不思議な市長だ。――御覧な、あの数々のものの、剛健な、あり得べき夢とあり得べからざる夢の間に、忽然と展いた通りを。彼は彼の大都市を建てるべく、颯爽といきまいてゐる。アルベラの戦ひから凱旋の途上で、既に理想の都市の設計にとりかゝつてゐたアレキサンダーの如く。
 彼も亦、彼の第一の戦ひからの凱旋の途上にあると同時に、既に理想の都市の設計に着実な、アリストテレス学校の学生に違ひあるまい。
 祈りはいらぬ、彼の市は建つ、一区一区と彼の町は彼の理想に向つて、奇峭な翼を伸べて行く。斯うして彼の「アレキサンドリア市」がつくられて行くのだ、見給へ! 横光利一の作物。



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