えあ草紙・青空図書館 - 作品カード


広告

片田舎にあった話
かたいなかにあったはなし
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「定本小川未明童話全集 5」 講談社
1977(昭和52)年3月10日
入力者特定非営利活動法人はるかぜ
校正者江村秀之
公開 / 更新2014-02-12 / 2014-09-16
長さの目安約 3 ページ(500字/頁で計算)
えあ草紙で読む
HTMLページで読む

広告

find Kindle 楽天Kobo Playブックス

find Audible YouTube

本の感想を書き込もう web本棚サービスブクログ作品レビュー

青空文庫の図書カードを開く

find えあ草紙・青空図書館に戻る

楽天Koboで表紙を検索

広告

本文より

 さびしい片田舎に、おじいさんとおばあさんが住んでいました。
 ある日、都にいるせがれのところから、小包がとどいたのです。
「まあ、まあ、なにを送ってくれたか。」といって、二人は、開けてみました。
 中から、肉のかん詰めと果物と、もう一つなにかのかん詰めがはいっていました。
「これは、おいしそうなものばかりだ。」といって、二人は喜びました。
 夕飯のときに、おじいさんは、
「どれ、せがれが送ってよこした、かん詰めを開けようじゃないか。」と、おばあさんにいいました。
 おばあさんは、三つのかん詰めを膳のところへ持ってきて、
「どれにしましょうか。」と、おじいさんにたずねました。
「そちらの小形の赤いかんは、なんだろうな。」と、おじいさんは、いいました。
 おばあさんにも、よく、それがわかりませんでした。
「なにか、外国の文字が書いてありますが……。」といって、おじいさんに手渡しました。
 おじいさんも、手に取ってみたが、やはりわかりませんでした。
「どんなものか、これをひとつ開けてみよう……」といいました。
 たとえ、年を取っても、やはり、珍しいものにはいちばん興味を覚えるものです。
 おじいさんは、そのかんのふたを開けました。すると香ばしいかおりがしたのです。
「粉じゃ、なんの粉だろう……。」と、頭をかしげました。
 こんどは、おばあさんが、その赤いかんを取って、香いを嗅いだのであります。
「おじいさん、これは、やはり麦を挽いた粉ですよ。うちのせがれは、子供の時分から、不思議な子で、こうせんが大好きだったから、こんなものを送ってよこしたのですよ。」と、おばあさんはいいました。
「飯にでもかけて食べるのかな。」
「きっと、そうするのでございますよ。」
 おじいさんと、おばあさんは、その赤黒い粉を飯にかけて食べました。しかし、その香いほど、あまり、うまくはありません。
「砂糖をまぜなければならぬだろう。」と、おじいさんがいいました。
「これは、子供の食べるものですね。」と、おばあさんはいいながら、立って、砂糖を持ってきました。そして、二人は、飯にかけて食べました。
 夜になって、二人は、いつものごとく床につきました。けれど、どうしたことか、目がさえて眠れませんでした。
「ああ、こうせんを食べたので、胸がやけたとみえて眠れない。」と、おじいさんがいいますと、
「外国のものは、体に合わないから、食べるものでありませんね」と、おばあさんは、答えました。
 二人は、やっと眠りつきましたが、いろいろの夢を見ました。
 おじいさんは、まだ元気で、河へ釣りにいった夢を見たり、おばあさんは、まだ若くて、みんなと花見にいったことなどを夢に見ました。
 翌日、二人は、あの赤いかんの中の粉を捨ててしまおうかと話をしていました。そこへ、小包よりおくれて、せがれから、手紙がとどきました。…

えあ草紙で読む

ライフメディアへ登録

Koboユーザー必見!
楽天スーパーポイントとは別に
価格の5%がポイントに!

find えあ草紙・青空図書館に戻る

© 2016 Sato Kazuhiko