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おじいさんとくわ
おじいさんとくわ
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「定本小川未明童話全集 4」 講談社
1977(昭和52)年2月10日
初出「小学少年」1924(大正13)年4月
入力者特定非営利活動法人はるかぜ
校正者雪森
公開 / 更新2013-05-25 / 2014-09-16
長さの目安約 5 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 だんだんと山の方へはいってゆく田舎の道ばたに、一軒の鍛冶屋がありました。その前を毎日百姓が通って、町の方へゆき、帰りには、またその家の前を通ったのであります。
「どうか、今年も豊作であってくれればいいがな。」と、話をしてゆきました。
 家の内で、おじいさんは、その話し声を聞いていました。そして仕事をしながら、
「どうか、米や豆が、よく実ってくれるように。」と、鉄を打って、百姓のつかうくわなどを造っていました。
 おじいさんは、できあがったくわを、店さきにならべておきました。百姓は、みんなこの店で、くわや、かまを買っていくのです。
「もう、くわの刃もへったから、新しいのを買って帰ろう。」と、一人の百姓は、店さきに並べられたくわを見ていいました。
「ああ、そうだ。私も買ってゆこう。」
「うちのくわも、だいぶん古くなったから、俺も買ってゆこう。」と、またほかの百姓が、いいました。
 おじいさんは、話の好きな、いい人でありました。
「このくわは、私が念をいれて、どうか今年は豊作であってくれるようにと、神さまに祈って造ったくわなんだから、なかなかしっかりできている。」と、おじいさんはいいました。
 百姓は、そこにあったくわを手に取ってながめました。
「なるほど、しっかりしている。」と、百姓はいいました。
 そして、めいめいが、そこにあったくわを買って帰りました。
 おじいさんは、自分の念をいれて造ったくわが、百姓の役にたつのを喜んでいました。
「あのくわなら、だいじょうぶだ。」と、おじいさんは、百姓が毎日手に力をいれて、田や圃で、くわを振り上げるようすを思って、独り言をしました。
 すると、ある日のこと。いつかくわを買っていった百姓が、はいってきました。
「今日は。」
「おじいさん、せんだって買っていったくわは、まことにいいくわだが、重くて、手がくたびれます。もっと軽くして、造ってください。」といいました。
 おじいさんは、「はてな。」と、頭を傾けました。どうして、そんなに重いだろう?
「ああ。わかった。私は、あのくわを造るときに、米や、豆が、たくさん実ってくれるようにとばかり思っていた。それだからだ。」
 おじいさんは、うなずきました。
「こんど、軽いくわを造ってあげましょう。」といいました。
「どうか、そうしてください。」と、百姓は、頼んで帰りました。
 おじいさんは、仕事場で、どうか軽くて、百姓が疲れないように! と心で祈りながら、鉄を打ち、くわを造りました。
「これなら、手の疲れるようなことはない。」と、おじいさんは、できあがったくわを取りあげてみて喜びました。
 百姓は、やってきました。そして、そのくわを取りあげてみました。
「これは、軽くて、いいくわだ。」といって、喜んで持って帰りました。
「あれなら、だいじょうぶだろう。」と、おじいさんは思いました。

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