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黒んぼ会
くろんぼかい
著者
文字遣い新字旧仮名
底本 「日本児童文学大系 三〇巻」 ほるぷ出版
1978(昭和53)年11月30日
初出「文学案内特報 第19号」1935(昭和10)年
入力者菅野朋子
校正者雪森
公開 / 更新2014-07-19 / 2014-09-16
長さの目安約 4 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 男の子たちはみんな、体中まつ黒にしたいと思ひました。色のなまつ白い男の子なんかは、この漁師の村ではバカにされました。それに夏休みがすんで九月になると、村の小学校では「黒んぼ会」があるのでした。
「今年は、誰が一等賞になるだらう?」
 黒んぼ会は、学校中で一番日に焼けた男の子だけ三人選んで、黒いふんどしの賞品をくれるのでしたが、それには会のマークが入つてゐるので、みんな欲しかつたのです。
「ちきしよう、今年は僕がもらふんだぞ。」
「君なんぞ駄目だい。ふんどしの下が白いぢやないか。」
「ぢや、君だつて駄目だい。足の裏が白いぢやないか。」
「足の裏はいいんだぞ。」
「いや、駄目なんだい。去年から徴兵検査みたいに、お尻も足の裏も見るんだから。」
 夏休みの終り頃になると、男の子たちは一層色を黒くしようとして、黒いふんどしの下や、足の裏まで日に焼くのでした。
 みんな黒んぼ会を、大へん楽しみにして待ちましたが、郵便局の清ちやんだけは、ただ一人ビク/\して恐れてゐました。
 清ちやんは尋常二年ですが、去年の黒んぼ会には、一番体が白くて、みんなから「白瓜」といふあだなをもらひました。それは、体の弱いお母さんと一緒に、涼しい山へ避暑に行つてゐたので、村の漁師の子供たちのやうに、一日裸体で海につかつてゐられなかつたからです。
 清ちやんは「白瓜」と云はれたことが、とても辛かつたので、今年はどこへも行かずに、暇さへあれば舟を借りて、近所のお爺さんと釣に出たり、浮環をもつて泳いだり、また蝉とりをして日に焼けました。けれどいつも靴をはいてゐるので、跣足になると、足だけ白つぽいのでした。
「困つたなあ、足まで見るんだつて……」
 清ちやんが、お尻や足の裏まで見られることを聞いて来て話すと、お母さんは目を円くされました。
「へんな黒んぼ会ねえ。そんなんだつたら、その日だけお休みよ。丈夫でさへあれば、色なんか白くつたつていいんですから。」
「だつて……」
 清ちやんは、その日だけ休むと、きつとまた何とか云はれるにきまつてゐるので、その日までに、どうかして、白い自分の足を黒くしたいと思ふのでした。
 九月の一番はじめの土曜日が、その「黒んぼ会」の日でした。学校は朝から大騒ぎで、男の子は大抵運動会の日のやうに、シヤツとパンツだけで、中にはわざと、黒いふんどしだけの跣足の子もゐました。
 お昼ごはんをすますと、女の子たちは早く家へ帰り、男の子たちだけ列をつくつて、一年生から順々に講堂へ入りました。
 靴を脱ぎ、裸体になつた清ちやんは、ブルブルふるへながら、「気をつけエ」の姿勢をしてゐました。清ちやんの足は、体と同じやうにまつ黒でした。
「わからねばいいが……」
 受持ちの先生と、体操の先生と、それから校長先生とが、順々にみんなの黒い体や足を見て来られます。清ちやんはハラ/\しながら、でもツン…

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