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お化けとまちがえた話
おばけとまちがえたはなし
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「定本小川未明童話全集 5」 講談社
1977(昭和52)年3月10日
入力者特定非営利活動法人はるかぜ
校正者江村秀之
公開 / 更新2014-02-09 / 2014-09-16
長さの目安約 6 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 ある田舎に、二郎という子供がありました。よく隣の家へ遊びにゆきました。
 その家には、二郎といっしょになって、遊ぶような子供はなかったけれど、女房は、二郎をかわいがってくれました。
「おばさん、あの赤いかきの葉をとっておくれよ。」と、二郎は、裏にあったかきの葉をさしていうと、女房は、仕事をしながら、
「いま、これが終えたら、取ってあげますよ。」
と答えて、仕事がすむと、さおを持ってきて、二郎のほしいというかきの葉を取ってくれたこともあります。
「おばさん、つるを折っておくれよ。」と、二郎は頼むと、女房は、
「はい、はい、いまこれがすむと折ってあげますから待っておいでなさいね。」といいました。
 二郎は、女房の仕事をしているそばで、おとなしく遊んでいました。そして、おりおり、その方を見ては、
「おばさん、まだかい。」と、催促をしたのであります。
 女房の家は、貧しかったのであります。主人は、行商をして、晩方、暗くならなければ帰ってこなかったのでした。せがれは、旅へ奉公にやられて、女房は、主人の留守も家でいろいろな仕事をしたり、手内職に封筒を貼ったりしていたのでした。
「おまえは、よくお隣へゆくが、おかみさんの仕事の邪魔をしてはいけないよ。」と、おばあさんは、二郎にいい聞かせたのです。
 しかし、二郎は、隣へ遊びにゆきました。ゆけば、人のよい女房は、
「二郎ちゃん、遊びにきたのかね。」といって、心持ちよく迎えてくれました。そして、二郎が遊びに飽きて帰ろうとすると、
「転ばんように、お帰り。また、遊びにきなさいね。」と、いってくれたのであります。
 秋も老けて、末になると、いつしかかきの木は坊主になってしまって、寒い木枯らしが、昼も夜も吹きさらしました。そして、日は短くなって、昼になったかと思うと、じきに晩となり暗くなったのでした。
 からすが、悲しそうに鳴いて、村の中はさびしげに見え、とうとう雪の降る冬になってしまいました。
 雪が降って、地の上に積もると、二郎は、外へ出て遊ぶことができないから、いままでよりも、もっとたびたび、隣の家へ遊びにゆくようになりました。
 女房は、明るい、障子窓の下へ、箱を置いて、それを台にして、上で封筒を貼っていました。日が当たると、屋根の雪が解けて、ポトリポトリと音をたて、障子に黒い影をうつして落ちるのでした。二郎は、げたについた雪を、入り口の柱でたたいて、落としてから、
「おばさん……。」といって、入ってきました。
 二郎のおばあさんは、あまり、たびたび二郎が、隣へいって邪魔をするので、
「二郎や、いくら、お隣のおかみさんは、いい人でも、そう毎日いっては、しまいにきてくれるなというから、あまりゆくのじゃない。」といいました。
「おばあさん、おかみさんは、いやな顔なんかしないよ。」と、二郎は答えました。
「それは、いけば、いやな…

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