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脊の低いとがった男
せいのひくいとがったおとこ
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「定本小川未明童話全集 5」 講談社
1977(昭和52)年3月10日
入力者特定非営利活動法人はるかぜ
校正者雪森
公開 / 更新2013-06-13 / 2014-09-16
長さの目安約 5 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 太郎が叔母さんから、買ってもらった小刀は、それは、よく切れるのでした。あまり形は、大きくはなかったけれど、どんな太い棒でもすこし力をいれれば、おもしろいように切れるのでした。
 太郎は、いままで持っていた小刀を捨ててしまいました。その小刀は、いくらといでもよく切れなかったのです。太郎には、よくとぐことができなかったのにもよりますけれど、もとから、その小刀は、よく切れなかったのでした。紙を切るにも、ひっかかるようであったり、また鉛筆を削るにもガリガリ音がして、よく切れないのでありました。
 それにくらべると、こんどの小刀は、ひじょうによく切れたのです。紙を切るのにも、ほとんど音がしなければ、また鉛筆を削るのにもサクリサクリと切れて、それは、おもしろかったのであります。
 そんないい小刀を持つことのできた太郎は、幸福でありました。いつも、鉛筆の先は、木の香がするようにきれいに削られていて気持ちがよかったからです。太郎は、かばんの中へ、その小刀を失わないように大事にしまって、やがて、学校の終わった鐘が鳴ると、いつものように、急いで、我が家の方へ帰ってきました。
 途中、太郎は、桑圃の間を通ったのであります。この道は、毎日通らなければならぬ道でしたが、このときは、ただ太郎一人でありましたから、右を見たり、左を見たりして、道草をくってやってきました。
 すると、一本、桑の枝が目にはいりました。もし、この枝を根もとのところから切ったら、じつにいいつえが造られたからです。また、つえなどを造らなくとも、その根もとはじつに太く、そして枝は、おもしろく曲がりくねっていて、見るばかしでも好奇心をそそらせるようなものでした。
「あの枝がほしいな。」と、いって、太郎は、ぼんやりとたたずんで見ていましたが、ふと彼は、自分のかばんの中に、切れる小刀がはいっていたことを思い出したのであります。
 太郎は、にっこりとしました。あの小刀で切りさえすれば、どんな枝でも切ることができると思ったからです、彼は、カバンの中から小刀を出そうとしました。そして、だれか、見ていはしないかと、あたりを見まわしました。もし、百姓が、見つけたなら、きっと走ってきてしかるからであります……。太郎は、うしろを振り向いたときに、びっくりしました。なぜなら、そこには、脊の低い、頭のとがった男が青い顔をして立っていたからです。
 太郎は、桑の枝を切るどころでありませんでした。急に、歩き出しますと、その男も太郎について歩いてきました。
 太郎は、気味が悪くなりましたが、だいたんに振り向きました。そしてこの見なれない男を見ると、かえって、小さな男のほうが、びくびくしているらしかったのです。このようすを見て、太郎は、急に、気が強くなりました。
「俺は、切れるナイフを持っているのだぞ!」といわぬばかりに、かばんの中から、小刀を取…

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