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ぴかぴかする夜
ぴかぴかするよる
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「定本小川未明童話全集 5」 講談社
1977(昭和52)年3月10日
入力者特定非営利活動法人はるかぜ
校正者雪森
公開 / 更新2013-06-18 / 2014-09-16
長さの目安約 5 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 都会から、あまり遠く離れていないところに、一本の高い木が立っていました。
 ある夏の日の暮れ方のこと、その木は、恐ろしさのために、ぶるぶると身ぶるいをしていました。木は、遠くの空で、雷の鳴る音をきいたからです。
 小さな時分から、木は、雷の怖ろしいのをよく知っていました。風をよけて、自分をかばってくれた、あのやさしいおじさんの大木も、ある年の夏の晩方のこと、目もくらむばかりの、電といっしょに落ちた、雷のために、根もとのところまで裂かれてしまったのでした。そればかりでない、この広い野原のそこここに、どれほど多くの木が、雷のために、打たれて枯れてしまったことでしょう。
「あまり、大きく、高くならないうちが、安心だ。」といわれていましたのを、木は、思い出ました。
 しかし、いま、この木は、いつしか、高く大きくなっていたのでした。それをどうすることもできませんでした。
 木は、それがために、雷をおそれていました。そして、いま、遠方で鳴る雷の音をきくと、身ぶるいせずにはいられませんでした。
 このとき、どこからともなく、湿っぽい風に送られてきたように、一羽のたかが飛んできて、木のいただきに止まりました。
「私は、山の方から駆けてきた。どうか、すこし、翼を休めさしておくれ。」と、たかはいいました。
 しかし、木は、身ぶるいしていて、よくそれに答えることができませんでした。
「そ、そんなことは、お安いご用です。た、ただ、あなたの身に、障りがなければいいがと思っています。」と、やっと、木は、それだけのことをいうことができました。
「それは、どういうわけですか。なにを、そんなに、おまえさんは、おそれているのですか?」と、たかは、木に向かって問いました。木は、雷のくるのを恐ろしがっていると、たかに向かって、これまで聞いたり、見たりしたことを、子細に物語ったのでありました。これを聞いて、たかはうなずきました。
「おまえさんのおそれるのも無理のないことです。雷は、こちらにくるかもしれません。いま、私は、あちらの山のふもとを翔けてきたときに、ちょうど、その近くの村の上を暴れまわっていました。しかしそんなに心配なさいますな。私が、雷を、こちらへ寄越さずに、ほかへいくようにいってあげます。」と、たかはいいました。
 木は、これを聞くと、安心いたしました。しかし、この鳥のいうことを、はたして、雷がききいれるだろうかと不安に思いました。そのことを木は、たかにたずねますと、
「私は、山にいれば、雷を友だちとして遊ぶこともあるのですから、きくも、きかぬもありません。」と、たかは、うけあって、いいました。ちょうど、そのとき、前よりは、いっそう、大きくなって、雷の音が、とどろいたのでした。木は、顔色を失って、青ざめて、ふるえはじめたのです。たかは、空にまき起こった、黒雲を目がけて、高く、高く、舞い…

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