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おけらになった話
おけらになったはなし
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「定本小川未明童話全集 5」 講談社
1977(昭和52)年3月10日
初出「赤い鳥」1926(大正15)年10月
入力者特定非営利活動法人はるかぜ
校正者江村秀之
公開 / 更新2014-02-06 / 2014-09-16
長さの目安約 8 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 あるところに、あまり性質のよくない男が住んでいました。この男は平気で、うそをつきました。また、どうしてもそれがほしいと思えば他人のものでも、だまってそれを持って帰りました。
 こういう人間をば、世間は、いつまでも知らぬ顔をしておきませんでした。みんなは、だんだんその男をきらいました。その男と交際することを避けました。けれど、そんなことで、この男は、反省するような人間ではなかったのであります。
 とうとう男は、悪いことをしたために、捕らえられて牢屋へいれられてしまいました。いままで、自由に、大空の下を歩いていたものを狭苦しい牢屋の中で送らなければならなかったのでした。
「あの男も、ついに牢屋へいれられてしまった。こんどは、すこしは、目がさめるだろう。そして、真人間になって、出てきてくれればいいが……。」と、みんなはうわさをしていました。
 牢屋へいれられた男は赤い舌を出していました。
「おれが魔法使いのことを知らないか、ばかどもめが……。」といって、冷笑していました。
 この男は、いつ、その牢屋から逃げたものか、わずかのまに、そこにいなくなってしまいました。
 牢屋の番人は、たまげてしまいました。まったく影のごとくに消えてしまったこの男を、普通のものとは思われなかったのです。
 男を知っているものは、そんなうわさをしているやさきに、男が、目の前へ姿をあらわしたものですから、びっくりして、
「はや、おまえは、牢から出たのか?」と、いうものもあれば、
「いつ、そんなからだになったのか……。」と聞いて、あまり、その許されようの早いのにあきれたものもありました。
 男は、ずるそうな目つきをして、みんなの顔を見まわしながら、にやにやと笑って、
「なんで、こんなに早く許されるものかな、おれは、逃げてきたのさ。しかし、おれを捕らえておくなどということは、無理だよ。おれは魔法使いだからな。」と答えました。
 みんなは、腹の中で、ほんとうに、この男は、魔法を使うのだろうか? なんにしても、また困ったことができたものだと思ったのであります。
 男は、さかんに悪いことをしました。しかし、世間は、それを許すものではありませんから、じきにまた捕らえられてしまいました。こんどは、手きびしくされて、ふたたび逃げられないように、牢屋の中へいれられてしまいました。
「こんどは、ゆだんをして、この男を逃がすようなことがあってはならないぞ。」と、番人は、目上の役人から注意をされました。
 番人は、またと、そんなような手落ちがあっては、自分の生活に関係すると、不安に感じましたから、日夜怠りなく、この男を注意したのであります。
「こんどは、あの男も、逃げ出してくるようなことがあるまいから、まあ安心していてもさしつかえない。」と、彼を知って、迷惑を受けたことのある人たちは話をしていました。
 ちょうど…

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