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おばあさんと黒ねこ
おばあさんとくろねこ
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「定本小川未明童話全集 5」 講談社
1977(昭和52)年3月10日
入力者特定非営利活動法人はるかぜ
校正者江村秀之
公開 / 更新2014-02-09 / 2014-09-16
長さの目安約 12 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 いまでは、いい薬がたくさんにありますけれど、まだ世間が開けなかった、昔は、家伝薬などを用いて病気をなおしたものであります。
 この話も、その時分のことで、雪の降る北の国にあったことでした。
 おじいさんは、働いて、たくさんのお金をおばあさんに残して、先へこの世の中から去ってしまった。後に残されたおばあさんは、独りさびしく暮らしてゆかなければなりませんでした。
 おじいさんとおばあさんの間には、ただ一人の子供もなかったのです。おばあさんは、おじいさんの残していってくれた、たくさんのお金がありましたから、なに不自由なく暮らしていくことができました。
 しかし、おばあさんもまたしあわせな人ではありませんでした。ふと目を患って、それがだんだん悪くなって、ついに両方の目とも見えなくなってしまったのです。
 おばあさんの家に、一匹の黒ねこが飼われていました。このねこは、おばあさんが病気にならない時分に、ある日のこと、犬に追われて裏の高いすぎの木に逃げてきて上がったのでした。
「あのねこを殺してしまえ。」と、村の子供たちは、犬にけしをかけて木の下にやってきました。そしてねこを目がけて石を投げつけたり、棒を持ってきて突き落とそうとしたりしたのでありました。
 黒ねこは、いっしょうけんめいに、すぎの木の枝にしがみついていました。小石は、四方から飛んできて、体のまわりをうなって飛んでゆきました。それが一つ当たろうものなら、いくらねこは、しっかりしがみついていても、目がくらんで落ちずにいられませんでした。ねこはそれを思うと、ぶるぶる震えていたのです。
「もっと長いさおを持ってこいやい。」と、子供たちは叫んでいました。
 このとき、おばあさんは、家の内で仕事をしていましたが、あまり犬が吠えますので、何事が起こったのであろうと裏へ出てみました。
 すると村の子供らがおおぜい寄り集まってきて、すぎの木に逃げて上がった、ねこを突き落として、犬に殺させようとしていたのであります。おばあさんは、悪いことをする子供らだと思いました。
「ああ、みんないい子だから、そんなことをするものでない。」と、おばあさんはいいました。
 子供らは、おばあさんのいうことなどを耳にいれません。
「あのねこは、鶏のひなを取った悪いねこだもの、殺したってかまいはしない。」
「あのねこは、宿なしなんだから、だれもしかりゃしないんだ。」
 子供たちは、かってな理屈をつけて、さおにさおを継ぎ足して、どうかして高い木の枝までとどくようにしたいと苦心していました。
 犬は、上を仰いで、おおぜいの子供たちの加勢があるので、ますます猛り吠えていたのです。
 おばあさんはこの有り様を見ると、木の上にしがみついているねこがかわいそうでなりませんでした。
「そのねこは、家がないなら私におくれ、飼ってやりましょう。そのかわり、そこにいる…

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