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歓魚夜曲
かんぎょやきょく
作品ID53569
著者萩原 朔太郎
文字遣い旧字旧仮名
底本 「萩原朔太郎全集 第三卷」 筑摩書房
1977(昭和52)年5月30日
入力者kompass
校正者小林繁雄
公開 / 更新2011-08-07 / 2018-12-18
長さの目安約 1 ページ(500字/頁で計算)

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本文より


光り蟲しげく跳びかへる
夜の海の青き面をや眺むらむ
あてなき瞳遠く放たれ
息らひたまふ君が側へに寄りそへるに
浪はやさしくさしきたり
またひき去る浪
遠き渚に海月のひもはうちふるへ
月しらみわたる夜なれや
言葉なくふたりさしより
涙ぐましき露臺の椅子にうち向ふ
このにほふ潮風にしばなく鴎
鱗光の青きに水流れ散りて
やまずせかれぬ戀魚の身ともなりぬれば
今こそわが手ひらかれ
手はかたくあふるるものを押へたり。
ああかの高きに星あり
……………
しづかに蛇の這ひ行くごとし。



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