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学究生活五十年
がっきゅうせいかつごじゅうねん
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「津田左右吉歴史論集」 岩波書店
2006(平成18)年8月17日
初出「思想 三一九」1951(昭和26)年1月
入力者坂本真一
校正者門田裕志
公開 / 更新2012-06-14 / 2014-09-16
長さの目安約 25 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 学問上の閲歴のようなものを書けという『思想』の編輯部からの話があった。これまでもあちこちから同じことをしばしば勧められたが、いつも書く気になれなかった。人に語るほどの閲歴もないし、久しい前のことは記憶もはっきりせず、その上に、じぶんのことを書くのは書きにくくもあるので、筆をとりかねたのである。それに、ぼくがいくらか学問上のしごとをしたとするにしても、その大部分は一般の学界とは殆どかかりあいのないものであったから、ぼくの閲歴はぼくだけの閲歴であって、それによって学界の動向などが知られるわけでもなく、従ってそれを書くことに大した意味はない、という理由もあった。しかし書かないことを固執するにも及ぶまいから、思い出されることを思い出すままに少しばかり書いてみることにする。
 学問上の論文らしいものを書いたのは明治時代の末からであるが、書物の形でそれを公にしたのは、『朝鮮歴史地理』と『神代史の新しい研究』とがはじめであって、何れも大正二(一九一三)年の出版である。しかし、かなり前から長い間かかってしたしごとをまとめたものは、大正五(一九一六)年から十(一九二一)年までに四巻を出した『文学に現はれたる我が国民思想の研究』である。それから後にも、『古事記』や『書紀』についての考や日本の上代史上のいくつかの問題を取扱ったものを書いたことはあるが、大正時代の末ころから後のおもな著作は、シナ思想に関するものであって、初から単行本で出したものもあるが、その多くは、『東洋学報』とか『東洋文庫論叢』とか、または東大文学部出版の名義になっている『満鮮地理歴史研究報告』とか、または早大のぼくの研究室から出した『東洋思想研究』とか、そういうもので発表した。それで、どうしてこういうようなしごとをするようになったかということであるが、それには『国民思想の研究』のことから始めるのが便宜であろう。
『国民思想の研究』という書名は、出版まぎわにつけたものであるし、ああいう形でああいうものを書こうという構想のほぼまとまったのも、大正のはじめのころであったろうと思うが、手をつけはじめたのは、それよりも十二、三年前のことである。たしか明治三十三(一九〇〇)年であったように記憶するが、その前の二、三年ほどの間、地方の中学の教師をしていたのを、この年に東京に帰って獨逸学協会学校につとめることになった。同じようなしごとではあるが、いくらか新しい気分にもなったので、この機会に明治維新のことを、主として思想の方面について、少し考えてみようと思いついた。どうしてそういうことを思いついたかは忘れたが、フクチ オウチの『幕府衰亡論』、キムラ カイシュウの『三十年史』、タナベ レンシュウの『幕末外交談』、その他、旧幕臣たちの著書を読んでいたので、それに誘われたところがあったのであろうか。トガワという人の『幕末小史』や『旧…

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