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窓にて
まどにて
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「日本プロレタリア文学集・38 プロレタリア詩集(一)」 新日本出版社
1987(昭和62)年5月25日
初出「労働文学」1919(大正8)年4月号
入力者坂本真一
校正者雪森
公開 / 更新2015-12-08 / 2015-09-01
長さの目安約 1 ページ(500字/頁で計算)
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本文より


うらの窓から見ると
すぐ窓下の庭にあるひねくれ曲った一本の木
すっかり葉っぱの落ちつくした
それは大きないちじくの木だ
そこに槇の生垣がある
その外は一めんの野菜畠で
菜っぱや大根が葱もいっしょに青々としている
その上をわたってくる松風や浪の音
朝々のきっぱりした汽船の汽笛
みよ雪のようなけさの大霜を
河向うの篠やぶでは
鵙がひきさかれるような声をして鳴いている
ふたたび裏庭のいちじくの木をみると
いままで自分はきづかなかったが
もうその枝々には
どの枝々のさきにも
みんなおなじように新芽の角がいろづいている
此の氷のような世界につきだした槍の穂先
あのあらしの中から伸びでて
何という強さであろう
此の健康をみろ
此の生の力を
いまこそ自分は自分を信ずる
(『労働文学』一九一九年四月号に発表 『山村暮鳥全集』第一巻を底本)



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