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雪の線路を歩いて
ゆきのせんろをあるいて
作品ID53973
著者後藤 謙太郎
文字遣い新字新仮名
底本 「日本プロレタリア文学集・38 プロレタリア詩集(一)」 新日本出版社
1987(昭和62)年5月25日
入力者坂本真一
校正者雪森
公開 / 更新2016-01-20 / 2015-12-24
長さの目安約 1 ページ(500字/頁で計算)

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本文より


貧しさの為に俺は歩けり
ひとすじの道 雪の線路を俺は歩けり
貧しさの為に歩ける俺には
火を吐きて 煙を挙げて
罵る如く 汽笛を鳴らして
走りゆくあの汽車が憎し
文明の利器なれども俺には憎し
ひもじさの為に疲れて歩ける俺には
それ食えがしに汽車の窓より
殻の弁当を投げつくる人の心が憎し

とりわけて今 村を追われて歩ける俺には
スチームに温められて
安らかに旅する人の心はなお憎し
われ等が汗にてなりし
秋の収穫を取り去る代りに
彼の怖ろしき文明の病毒を運び来る
あの汽車は
毒蛇のごとくたまらなく憎し

毒蛇のごとくたまらなく憎きはあの汽車
野獣の呪いのごとく 夜も日も唸りて
若き男女の幾群を
ああ痛ましき都会の工場に送り出す
たまらなく憎きはあの汽車
   (五行抹消)
貧しさの為に歩ける俺には
村を追われて歩ける俺には
ひとすじの道 雪の線路を歩ける俺には
文明の利器なれどもたまらなく憎し
(一九二六年四月後藤謙太郎遺稿集刊行会刊『労働・放浪・監獄より』を底本)



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